京都大学付属病院は8日、宮本享院長名で『新規採用研修医の自宅待機に関する報道について』と題する文章をホームページ上で公開した。7日に共同通信やNHKなどが報じた内容に対して猛反論を行う異例の事態になっている。
慶応大病院での集合飲み会を想起させる報道
共同通信は7日、『京大病院研修医57人、飲酒会食し自宅待機 コロナ予防方針に反し』との記事で「京都大病院(京都市左京区)の医師や研修医ら計95人が、飲酒を伴う会食の自粛方針に反したとして自宅待機となっていることが7日、病院への取材で分かった」とし、「病院では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月から会食などに参加しないよう注意喚起していた。今月2日、研修医ら新たに採用された職員に自己申告書を提出させたところ、違反が判明。違反した日から2週間の自宅待機を指示した」と報じた。
問題となっている部分は今回の措置をめぐる背景に関して記述した「研修医を巡っては、慶応大病院(東京・新宿)で新型コロナウイルスの集団感染が発生。研修医は約40人で飲食を共にしていたという」という部分だった。この記載があったため、京都大学病院の事例も慶応大病院と同様、研修医たちが集まって集団で飲食をともにしていたイメージを想起させるようになっていた。
「家族との会食」を含むすべての飲食が対象
これに対して、京大附属病院は8日、次のような文書をホームページ上で公開し、猛反発している。
「先般、本院に採用された新研修医が多数自宅待機になっていることについての報道がございました。京大病院を受診されている患者さんや関係者の皆様にご心配をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
本院では、本年3月に各地の大学を卒業したばかりで4月から本院で勤務をはじめる新研修医に、4 月1日までの2週間の間に一回でも2人以上(家族での食事を含む)で飲酒を伴う外食をしたことがあるか等について自己申告を求め、該当する場合には外食等の事実があった日から14日間を自宅待機とすることで、感染リスクを徹底的にゼロに近づける措置を行いました。
この自己申告をした新研修医が57名に上ったというのが報道されている事実です。本院としては、就職予定の新研修医に旅行や外食等の自粛を予め連絡しておりましたが、必ずしも全員が正確にその内容を十分理解できていたとは限らないなかで、研修医たちは極めて真摯に自己申告してくれたものと認識しています。
未来の医療を担う若者です。温かく見守っていただければ幸甚です。なお、これらの研修医の中に、新型コロナウイルス感染症を発症している者は1名もおりません」
つまりどういうことなのか。同病院総務課企画・広報係の担当者は次のように語る。
「慶応大病院さんの事例のように研修医が一堂に集まってコンパや飲み会を開いていたわけではありません。家族や友人などと2人以上で会食したり、国内旅行に行ったりしたケースを自己申告してもらった研修医が57人いるということです。あらかじめ新規採用の研修医には、3密(密閉、密集、密接)を避けるよう強く呼びかけていました。当院では他院より厳しい基準で自己申告をしてもらい、少しでもリスクがある場合には自宅待機にさせて頂いたということです。院長談話にあるように感染リスクを徹底的にゼロに近づける措置ということです。
個別の事例で、申告者が行った飲食が何人くらいの集まりだったのかなど詳細な内容は現時点でわかりかねますが、おおむねそれぞれが感染予防に配慮したうえで身近な人と会食などをしていたということです」
政府が緊急事態宣言を発出して、感染リスクの低減が求められている。京大附属病院は「隗より始めよ」を実践したということなのだろう。