政府は17日、新型コロナウイルスの感染拡大で生活に困窮する国民に対する支援策として「一律10万円給付」に方針転換した。取りやめになった「所得条件付き30万円給付」案は、すでに補正予算案に編成され、閣議決定をされていたのだが、突如、「公明党が要求したことを受けて」方針転換がなされた。
財務省関係者は「一律支給という方針自体はスムーズなのですが、すでに決まった額面内で補正予算を組み換えするという煩雑な作業が必要になり、早くても給付は6月になるのでは」と危惧している。一刻も早く現金での支援を求める世論が強い中、いったい、この方針転換の背景には何があったのか。
自民党若手女性議員らは激怒
自民党参議院議員の小野田紀美氏(岡山県選挙区)は16日、自身の公式Twitterアカウントに以下のように投稿。同僚の女性議員らから多くの賛同を得ている。
私達自民党の中でも強かった要求が結果として実現し国民のためになるなら、誰の手柄になろうと何でも良い。と思う気持ちも本当ですが、今回の政府の自民党内の意見に対する扱いと公明に対する扱いの差、ここには正直暴れ出したいぐらいブチギレてます。 https://t.co/j0Q9vtJ4VR
— 小野田紀美【自民党 参議院議員(岡山県選挙区)】 (@onoda_kimi) April 16, 2020
「私達自民党の中でも強かった要求が結果として実現し国民のためになるなら、誰の手柄になろうと何でも良い。と思う気持ちも本当ですが、今回の政府の自民党内の意見に対する扱いと公明に対する扱いの差、ここには正直暴れ出したいぐらいブチギレてます」
「同感。」(参議院議員 松川るい氏)
「だよねー」(参議院議員 三原じゅん子氏)
自民党内の若手議員らが一律給付の働きかけを行っていた姿は連日、国会内外で目立っていたが、なかなか党上層部の認識は変わらなかった 。ところが公明党が介入したとたん、急転直下で決定した。果たしてどういう政治決定プロセスだったのか。与党関係者は次のように今回の問題を整理する。
「当初案の『所得条件付き30万円給付』案は岸田文雄政調会長の仕切りのもと、党の政務調査会、総務会で承認され、政府が閣議決定しました。すべて『与党としての決定プロセス』を順守したものでした。しかし、想像以上に国民の反発が強く、特に党内若手議員を中心に『次の選挙への不安』が高まっていたこともあって、二階俊博幹事長が14日、『所得条件付き10万円給付』を検討する意向を表明しました。
二階さんの説明では、30万円給付とは別に、第2次補正予算案に盛り込む予定でした。ところが、そこに公明党の山口那津男代表が安倍晋三首相に直接掛け合い、30万円の給付を廃止し、一律10万円ということになったようです。最終的には首相の決断ということです。
しかし、政治決定プロセスが完全に破綻しています。党内では正直、『なんだこれは?』という話でもちきりです。公明党の漁夫の利があったにせよ、党内でもすこぶる評判の悪かった30万給付の件はおしまいです。当然、それを取りまとめられた岸田さんも無傷というわけにはいかないでしょうね」
公明の「連立離脱」言及に怯んだ安倍首相
全国紙政治部記者は次のように話す。
「岸田さんが主導する会派『宏池会』は伝統的に財政規律を旨とする派閥というだけで、給付案自体に反対していたわけではないのです。はしごを外されたかたちです。結果として国民意識と乖離している案を進めたという強いイメージが今回の一件で定着しました。これは、非常に痛いでしょうね。今回の件は、公明党の山口代表が『連立離脱』の可能性に言及し、それに安倍首相が怯んで了解したという話ですが、岸田さんの面目が丸つぶれなことに変わりはありません。
次期総理の呼び声高い岸田さんの存在を快く思っていない方はたくさんいらっしゃいます 。これはある意味、一つの政局なのではないかと思います」
政局は結構だが、新型コロナウイルス感染症の影響で国民生活は刻一刻で窮乏しつつある。とにかく迅速で実行力のある給付が求められる。
(文=編集部)