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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

なぜ突然、ミツバチは大量死したのか?女王蜂だけを残し、死骸も発見できず

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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なぜ突然、ミツバチは大量死したのか?女王蜂だけを残し、死骸も発見できずの画像1「Thinkstock」より

 カメムシをご存じだろうか。主に植物に付き、葉や茎などから汁を吸う害虫だ。刺激を与えると強烈な悪臭を放つことから、地域によっては「クサ虫」や「屁こき虫」などと呼ばれている。実はこのカメムシは、ミツバチと妙な因果関係をもっており、カメムシが原因でミツバチが大量死することがあるのだ。

 農林水産省の2013年度から15年度までの3年間の調査によると、ミツバチの大量死が報告されたのは、13年度は69件、14年度は79件、15年度は50件だった。これを全国の蜂場に置かれていた巣箱数、被害のあった巣箱数、その割合で見ると以下のようになる。

※左から年度、全国の巣箱数、被害のあった巣箱数、割合
 
・13年度、約41万箱、約3000箱、約0.7%
・14年度、約42万箱、約3300箱、約0.8%
・15年度、約42万箱、約2800箱、約0.7%

 確かに一度に数千匹のミツバチが死ぬのは大量死と思われるが、ミツバチの全体数から見た場合に、数千匹の死は1%以下でしかない。だが、欧米では女王蜂や幼虫だけを残して働き蜂がいなくなる「蜂群崩壊症候群」というのが大規模に広範囲に発生している。実は、農水省はこの蜂群崩壊症候群が日本で発生していないかを調査する目的で、3年にわたりミツバチの大量死の調査を行った。

 蜂群崩壊症候群は、非常に謎が多くミステリアスだ。そして、いくつかの大きな特徴がある。

 まず、働き蜂の減少は短期間のうちに急激に起こる。その結果、巣箱内には蜜、蜂児、女王蜂が残されており、働き蜂は数百匹程度しか残っていない。さらに、死んだ蜂が巣の中や周りでは発見できない。そして、これが広範囲に大規模に発生するのである。

 蜂群崩壊症候群は、病気、農薬、エサの不足などの単独要因では発生しないと見られている。これらの要因の場合には、蜂の死骸が残り、さらにその規模も小規模で、散発的な発生にとどまり、広範囲に大規模に発生することがないためだ。まさに、宇宙人に連れ去られるように、蜂の群れが忽然と姿を消すのだ。

水稲の栽培と関係?

 さて、農水省の調査の結果、日本では蜂群崩壊症候群は発生していなかった。しかし、毎年7月中旬から9月中旬の間に、ミツバチが大量死していることが明らかになった。13年度は69件の大量死のうち60件、14年度は79件中59件、15年度は50件中39件がこの時期に発生していた。また、発生地域は13年度が14道府県、14年度が22道府県、15年度が10道県で発生しており、特に北海道では多くの発生が確認された。

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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