中国軍、30万人リストラで「反・習近平」加熱の懸念…退役軍人が待遇不満で1万人デモ
「銃口から政権は生まれる」――。
これは中国共産党政権を樹立した毛沢東の有名な言葉だ。中国国民党との内戦における毛沢東の勝利は、中国人民解放軍がいなければ成し得なかったのは間違いない。つまり、軍が共産党政権を誕生させた最大功労者であり、毛沢東は新政権では軍幹部を重用し、自らも死ぬまで軍権を放さなかった。それほど、軍は政権維持に絶対に必要だと思っていたことのあらわれであるである。
ところが、今月中旬、中国国防省や中央軍事委員会など軍中枢機関が入る北京中央部のビル「八一大楼」周辺で、退役軍人による大規模な抗議活動が行われた。参加者は数千人から1万人以上との情報もある。毛沢東の言葉を持ち出すまでもなく、習近平政権にとっても軍は共産党一党独裁体制維持の要のなかの要であり、習近平主席も最高指導者就任後、ほぼ毎月、軍部隊を視察するなど重要視してきた。
その軍に今、何が起こっているか。報道だけでは見えてこない、退役軍人の不満や具体的な要求を探った。
衝突なきデモ
「道路が見えないほど、迷彩服の退役軍人で埋まっていた。全人代(全国人民代表大会=国会)開催の今年3月、100人くらいの退役軍人が集まったことはあるが、こんなに何千人ものデモは初めてよ」
当時の模様を現場付近の商店店員は、米政府系放送局「自由アジア放送(RFA)」に、こう語るとともに、続々と集まった元軍人の人数は、11日早朝には最初の数百人から最終的に1万人以上に達したと証言している。彼らは歩道に座り込んだり、国旗を手に軍歌を歌うなど、極めて統制がとれており、彼らを取り囲むようにして警備に当たっていた武装警察部隊との衝突は起きなかったという。
米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」によると、これは軍最高指導部が軍当局に対して、彼らを「怒らせたりしないように、礼儀正しく、丁重に対応せよ」などとの指示を出していたためだという。彼らとの交渉は党中央政治局委員の孟建柱・党中央政法委員会書記や人民解放軍の総政治部の少将らに当たらせた。
と同時に、党指導部は11日夜、退役軍人の居住地である9つの省の省長に高速鉄道で緊急に北京入りさせ、問題解決に当たらせるとの異例な措置をとったという。省長もそれぞれの省の退役軍人の代表者と個別に交渉し、説得に努めた。最終的に、退役軍人らは当局が用意した大型バスに乗り込み、そのまま地元に送り返されたという。