中国軍、30万人リストラで「反・習近平」加熱の懸念…退役軍人が待遇不満で1万人デモ
RFAによると、習主席の指示で、習主席の側近で中央軍事委員会弁公庁の秦生祥主任が退役軍人との交渉の最高責任者に就き、最終的に交渉をまとめ上げたという。
退役軍人の待遇不満
デモ参加者のほとんどは大隊相当の中国陸軍では「営」レベル以上の士官で、1993年と2000年に軍総政治部が実施した人員削減政策の対象。当時は軍総政治部が退役軍幹部に対して数万元の退職金を1回きり渡し、退役後の転職先は斡旋しないという取り決めだった。
しかし、その後、彼らがろくな転職先も見つけられず、年金も支給されないことから生活が困窮し、今回の直訴に及んだ。彼らは省ごとに退役軍人会を組織しているほか、他の省の退役軍人とも横のつながりがあり、退役軍人会が連携して、今回の北京での大規模な抗議デモを起こしたようだ。
軍の最高指導者でもある習主席は、昨年9月の大規模な軍事パレードの祝賀式典で演説し、今後30万人の軍縮を実行すると明言している。この対象になる30万人の退役軍人の退職金や年金、さらに転職先の斡旋などの対応を間違えると、再び今回のような混乱が起こる可能性が強いだけに、慎重に対応する必要がある。
習近平指導部の喉元に刺さった問題
また、このデモが起こった時期も政治的に微妙だ。中国問題専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」によると、中国共産党の重要会議である第18期中央委員会第6回総会(6中総会)が10月24日から開かれる予定で、それを前に、来年秋の党大会の最高指導部人事をめぐる権力闘争絡みで、反習近平派が退役軍人を動員したとの見方を伝えている。
このため、14日付の中国人民解放軍機関紙「解放軍報」は第6面の解説面で、陸軍の第26集団軍の一旅団長の論文を掲載し、今回の大規模デモについて、改革に反対する「敵対勢力の存在にもこと欠かない」と述べて、「敵対勢力」が「退役軍人の手当削減など根拠のないあらゆる話をネット上で拡散させている」などと批判。
党機関紙・「人民日報」系の「環球時報」も13日、「国家はこのような集団行動に賛成しない」とする論評を掲載し、「示威的な集団行動による不満の表明は良くない。誤解を招き、内外の勢力に利用されかねない」と指摘するなど、習近平指導部はリストラの対象になる退役軍人の動きに強い警戒感を募らせているのは間違いない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)