7月21日深夜に放送された『石橋、薪を焚べる』(フジテレビ系)に、「次期首相」「ポスト安倍」の有力候補のひとりと言われる自民党の石破茂衆議院議員が出演した。同番組は“スロー・トーク”をコンセプトに、とんねるずの石橋貴明が「ちょっと話してみたいゲストを毎回迎え、じっくり語り合う」という内容だ。そこで、石破氏の政治観や日本のビジョンが語られた。
田中角栄派の参議院議員を父親に持つ石破氏は、政治家になる前は「あんまりこれいい商売じゃねぇな」と思っていたという。大学生のときに父から「政治家になる気はあるか」と聞かれ、「ないです」と即答すると、「そうだろうなぁ、お前みたいに人のいいやつに務まる仕事じゃない」と言われたこともあったそうだ。
そして、就職先のひとつとして「全日空」を挙げると、父から「あれはロッキード事件で大変、田中角栄先生にご迷惑をかけた会社だ。絶対ダメだ」と反対された石破氏は、三井銀行(当時)に就職する。しかし、24歳のときに父が亡くなり、「無二の親友だった」田中氏が東京で行われた葬儀で葬儀委員長を務めた。
その後、石破氏が田中氏にお礼を言いに行くと「君、今すぐ銀行辞めて、(地元の)鳥取県を一軒ずつ回って。いいか、選挙の基本は一軒ずつ戸別訪問だ」と言われて面食らったという。さらに、田中氏は机をバンと叩いて「日本で起こるすべてのことはここで決まるんだ!」と言い放ち、石破氏に政界入りを強くすすめる。
「こっちは24歳のあんちゃんですよ。向こうは闇将軍、絶頂ですよ」と振り返る石破氏は、それが政治家になるきっかけだったと言い、「あの人は人間じゃないね。神ですよ、神。魔神だね」と驚嘆していた。
その後、時には一対一で、こんな話も聞いたという。
「努力すれば大臣というものはなれる。すごく努力すると大臣、2回、3回できる。ものすごく努力すると、幹事長とか政調会長とか総務会長とか、自民党三役はなれる。だけど総理大臣だけは、努力だけではなれないぞ」
この話を「2回聞いた」という石破氏は、石橋の「総理大臣になるには、何が(必要)?」という質問に「(党三役の)そっから先は、天命っていうの? お前がやれっていう、天からの命令でしょう」と答えた。
さらに、「今、ご自身が次期総理、最右翼と言われているわけじゃないですか。それも、最後は天命なんですか」という問いにも「そりゃそうですよ」と即答し、以下のように述べた。
「大臣、幹事長、政調会長……我ながらできすぎだと思いますよ。だけど、そっから先は、努力はするけど、一生懸命、だけどやっぱり天の命令っていうのがないと、なることはないでしょうね」
29歳のときに衆議院議員選挙で初当選し、国会議員となった石破氏は、小泉純一郎政権下で防衛庁長官に就任するが、「ムチャクチャ仲悪かった」小泉氏からの電話で“一本釣り”された際のエピソードなども明らかにした。
また、話が現在の安倍晋三政権に及ぶと、以下のように分析した。
「今の政治スタイルっていうのは、いちいち謝ってたり非を認めたりしていたら、かえって政権の強さが失われるっていう、そういう冷徹な厳しい判断が、たぶん今の政権にはあるんだと思う。それでもう7年間続いたわけ。7年間も続いた政権なんて日本初めてですよ」
石橋が「どうしても東京オリンピックまでやりたいのかなって感じが」と笑うと、「それも天命だもん。なるかならないかも天命だし、続けるか続けないかも天命だし」と語り、「一番つらいのも今の総理なんだろうなって思ったりする」と理解を示した。
さらに、話は安倍首相が星野源のインスタグラム動画とコラボレーションして騒動になった件へ。石破氏は「きっとこれは国民にウケると、思わなきゃやらないよ」「だから、まわりの人もずれちゃってるのかもしれない」と述べ、自身は大臣就任時に周囲にイエスマンを置かなかったと言明した。
また、自身がトップに立ったときには田中角栄のスタイルを踏襲するのかと聞かれると、石破氏は「いやそれはねぇ、時代じゃなくて、あの人は本当の天才だからね」「一歩でも近づきたいなって思う人を師匠に持てたのは幸せなことだった」と、改めて田中氏に敬意を払った。
その後、石橋から「これだけは絶対にやり遂げるぞ、ひとつ挙げるとすると」と政治ビジョンを聞かれた石破氏は、こう答えた。
「人口が減らない国にしたい」
「エネルギーのほとんどは外国から、食糧の半分以上が外国から、そんな国がいつまでもつとは思えない。防衛もアメリカがなきゃ成り立たない。人口はどんどん減っていく。そういうのに歯止めをかける、きっかけだけはつくりたいなと思ってます」
最後に、「(政治家を)明日でも辞めたい」と本音を漏らしていた石破氏。混乱する政局の主役となる日が来るのだろうか。
(文=編集部)