パワハラ・いじめ・不当人事・解雇・雇い止め……と、多くの人びとが泣き寝入りせざるを得ない状況が増える中で、自分の脚で立ち上がった人たちがいる。
東京府中市のガソリンスタンド「白糸台サービスステーション」(株式会社・柴田商店・柴田昌克社長)の労働組合員14人だ。説明がないまま社長が破産手続きをとり従業員20人全員を解雇、突然の事業所閉鎖に怒った従業員らは職場を占拠し、1月29日夜から泊まり込みで50日間近く自主管理営業を続け、再建をめざしている。
3月12日に復活決起集会をスタンド敷地内で行うと聞き現場に赴くと、東京管理職ユニオンや全国ユニオンの組合員なども応援に駆けつけ、20数名が集まっていた。
常時4~5人が泊まり込んで会社によるロックアウトを警戒しているスタンド内には「僕たちにも家族があります」「お客様は、現スタッフによる営業継続を望んでいます」などと横断幕やノボリが並び、アルバイトの高校生も腕章を付けて集会に参加するなど、現場は活気づいている。
集会は始まったものの、たて続けにお客の車が入り、その都度従業員が誘導して車検テスター業務などを続けていたので落ち着かない。しかし、これは繁盛している証でもあり、顧客からの激励もあるという。
そもそも、なぜ従業員が職場を占拠するなどという事態になったのか。野田辰也委員長(39歳=元工場長、同社は車検整備工場をもつ)とともに自主営業の中心になって働く元統括店長の高橋顕夫さん(41歳)に説明してもらった。統括店長とは、ここから徒歩5分にもうひとつのガソリンドがあり、両方を統括するという意味だ。
「社長と会長(社長の実父)の柴田一族は、地元では知られる代々続く地主なのですが、会社ではきちんとした就業規則もなく、残業の割増もきちんと支払われず、社員の残業代は支払われない。
店長にされると、職能給として月に9万円くらい手当がつきます。それで残業代は完全に支払われなくなり、店長になるとヒラのときより収入が減る仕組みです。まさに名ばかり管理職です。
争議が起きた時点からさかのぼって2年くらいは月に60~100時間の残業代支払がゼロだったのです」
一事が万事このような状態だったため2012年9月30日、従業員10人が残業代の支払請求書を社長宅に送付した。従業員20人のうち14人で結成した労働組合と社長が4回団体交渉したが、話は平行線をたどった。
野田委員長や高橋さんを含む管理職4名は12年12月、従来の企業内労組を維持したまま東京管理職ユニオンに加入し、それ以降は同ユニオンが交渉の前面に出ることになる。すると、それまでは必ず出ていたボーナスが不支給となり、組合員が社長から組合脱退を強要されるなどがあった。東京管理職ユニオンの鈴木剛書記長が言う。
「最近は、争議が起きると経営者が偽装破産、偽装倒産するケースが目立ちます。本件も、社長と実父である会長(ともに代表取締役)は地元では代々続く地主で、ガソリンスタンド、駐車場管理、賃貸物件などさまざまな資産があり、そもそも黒字なのに、なぜ事業閉鎖なのか納得のいく人はいないでしょう。
これまで就業規則も明確に示されず、社員には残業代を払わず、残業や休日出勤の割増も正確には行わず、あげくのはてに何の説明もなく破産しました。偽装倒産の疑いが濃厚で、許されるものではありません。団体交渉が始まって以降、社長は労働組合に対する嫌悪を隠さず、ある組合員には労組脱退を強要するなどしています」