こうしてユニオンは1月21日、東京都労働委員会に不当労働行為救済申立書を提出した。これと前後して事態は急を告げる。再び高橋さんが語る。
「1月に入ってから、業務連絡帳にすべての業務を1月30日以降は止めるように書かれ、数日後に29日まで期限が1日早まりました。何かあるに違いないと判断して何人かで会社に泊まり込んだところ、案の定、翌朝に管財人が来て破産を知らされ、会社からの退去を要求されたのです」
ちなみに徒歩5分の場所にあるもう一店舗はカギをかけられて従業員は入れなくなった。1月29日に職場に泊まり込むという咄嗟の判断がなければ、いまごろはカギをかけられ立ち入りも営業もできず、全員が途方に暮れていただろう。1日ずれてもダメだった。
「将来何かあったときのために」(高橋さん)2011年7月に労働組合を結成していたことも、すぐに行動に移れた原因だろう。
実際に現場に行くと従業員らに活気がありやる気満々なのだが、ガソリンは底をついてしまい、販売することができない。購入するには新たに法人をつくり高額の補償金を支払わなければならないからだ。電話も止められている。
現在は、洗車や車検テスター、そのほかの細かなサービスで営業をつづけており、前述の高橋さんによると、月130万円の売り上げペースだという。
地元に根付き、顧客も多く従業員もやる気を見せていることから、支援をしてもよいという企業も現れている。だが、破産したので、敷地や建物設備一切が管財人の管轄下にあり、公開競争入札を実施しなければならない。
支援に前向きの企業が落札すれば、労組は新法人を設立し、落札企業に家賃を払う形で営業再開していく計画である。しかし、別の人・企業が落札した場合は全く不透明になる。記事冒頭の3月12日の復活集会は、同日に行われた入札希望者の内覧会にあわせてのものだった。
野田辰也委員長は「順調にいけば、4月中ごろまでに新会社を設立させ、本格的に営業を再開したい」と抱負を語っている。
誰が落札するかによって展開は異なるが、結果がどうあれ、従業員たちは営業の継続と雇用の確保を要求し続ける予定だ。
入札期限は3月26日。現在も事務所内に布団を持ち込み、泊まり込みでロックアウトを防ぎ自主営業が続けられている。
(文=林 克明/ジャーナリスト)