1987年の放送開始から30年以上続く長寿番組『サンデーモーニング』(TBS系)。今年6月7日放送回は平均視聴率15.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録するなど、底堅い人気を誇っている。
「初めて『サンモニ』を視た人は、あまりの“地味さ”と“渋さ”に驚くかもしれません。77歳の司会の関口宏さんは終始、眉にしわを寄せたしかめっ面でボソボソと話し、コメンテーターが話している途中に何度も『そうみたいですねぇ』と言葉を挟む。張本勲さん以外のコメンテーターも、まるで原稿を読むかのように話し、日頃、他の情報番組に慣れている人にしてみれば、“何これ?”と逆に新鮮かもしれません。しかし、その安定感が60代以上の固定ファンをがっちり獲得しており、常に視聴率2桁をキープするTBSの看板番組になっているんです」(テレビ局関係者)
そんな“人気番組”だけに、『サンモニ』内での出演者同士のやりとりや発言がインターネット上で話題を呼ぶこともしばしば。例えば、2017日12月17日放送回では、張本氏の発言中に関口が「ちょっと待ってください、この話からいってください」と遮り、張本氏が「そっちの話は、あとにしてくださいよ」と抵抗。引かずに関口が「いやいやいや」と進めようとするも張本氏が「用意してあるんですから」と強引に発言を続け、“一触即発”状態になったとしてネットニュースにも取り上げられた。
また、今年8月17日放送回では、東京ヤクルトスワローズの小川泰弘投手がノーヒットノーランを達成したニュースのなかで、張本氏が「『ノーラン』というのはアメリカのノーラン・ライアンの名前を取って『ノーヒットノーラン』と名前付けてるんですよ」とコメントし、関口も「らしいですねぇ」と歩調を合わせたのだが、ネット上では事実誤認を指摘する声が続出した。
核兵器とコロナ、両者の背景はまったく異なる
そして8月9日放送回では、核廃絶組織のICANがアメリカの核軍備支出を新型コロナウイルス感染拡大対策に使えばどうなるかを試算した内容を紹介したのだが、コメンテーターの多摩大学学長で日本総合研究所会長の寺島実郎氏が発した「コロナは人間がつくり出した」という以下の発言が物議を醸す事態となっている。
「核兵器とコロナということなんですけど、よく考えてみるとですね、どちらも“人間がつくり出した”といえるんですね。核兵器はもちろんですけど、コロナもね、動物由来の感染症というのは、人間が動物テリトリーに踏み込んでいったことから起こっている。“人間の驕り”っていうのかな。感受性とですね、創造力の問題だと思うんだけど、“人間がつくり出したものは、人間が制御できるんだ”っていう意思に戻ってですね、知恵を出して、政策科学にしっかり向き合わなければならないと思いますね」
この発言をどうとらえるべきなのか。血液内科医で元東京大学医科学研究所特任教授の特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏は次のように語る。
「コロナは動物由来の感染症で、人間が動物テリトリーに踏み込んでいったために、現在の問題が生じたというのが主旨らしいのですが、この指摘は正しいです。ただ、私は核兵器とコロナを同列に議論することには賛成できません。なぜなら、両者の背景はまったく異なり、必要とされる対応が違うからです。核兵器は人間が作ったもので、自然に発生しない。広島・長崎の惨劇を繰り返さないようにするのは、我々のモラル次第です。
コロナは違います。コウモリの病原体がヒトに拡散したと考えられています。動物では無害な感染症がヒトに感染すると時に病となります。突然変異が起こり、ヒト・ヒト感染するようになれば大流行に発展することもあります。
これを『スピルオーバー』といいますが、このような現象が起こるのは中国が多い。1990年代以降、1996年のH5N1トリインフルエンザ、2003年のSARS、2009年の新型インフルエンザ、2013年のH7N9トリインフルエンザ、そして今回のコロナで5回目です。これは人と家畜の距離が近いことが影響しているのでしょう。中国の農村に入ると、どこにでも家畜がいて、市場では生きたまま販売されています。コロナ流行まで野生動物も流通していました。
さらに経済発展が続く中国では、人の生活圏が森や農地まで拡がり、人と野生動物との接触が増えた。今後も新型ウイルスは発生するでしょう。この問題の解決は、核よりもはるかに難しい。中国で人の営みを止めることはできないからです。では、どうすればいいのでしょうか。正確な情報を集め、適切に対応することです。
そのために必要なのは科学です。かつて猛威を奮った天然痘は科学の力で克服された。麻疹やポリオも感染者は激減した。ワクチンをはじめとした総合的な対策が有効でした。スピルオーバーについても、その発生を抑制できるように研究を進めるべきです。必要なのは中国と対立することではなく、国際協調です」
関口宏「世界が一つになれれば、コロナも服できる」
ちなみにICANによるアメリカの核軍備支出3.7兆円(2019年)をコロナ対策に使った場合の試算として、番組内では「集中治療室30万床、人工呼吸器3万5000台、医師7万5000人、看護師15万人が確保できるとわかったといいます」と紹介され、関口は「世界が一つになれれば、戦争もなくなるし、コロナも、もっともっと違う方法で克服できるはずなんだけど」とコメントしているが、全国紙記者はいう。
「アメリカは今年に入り、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に小型核弾頭の実戦配備を始めたことを認めるなど、核軍備を進めていますが、その背景には中国の軍拡があります。近年、中国の軍事拡張は勢いを増し、現在は数百発とされる核弾頭保有数が10年以内に2倍になるとみられており、米国は警戒を強めています。こうした状況下でもし米国が核軍備をやめれば、真っ先に中国からの軍事的脅威にさらされるのは、アメリカの同盟国である日本です」
“硬派”がウリの『サンモニ』だが、この日の放送に限っていえば、やや疑問を投げかけられる内容になったようだ。
(文=編集部)