最新の本にも10ケタのISBN
さらに、第8回選書リストのなかに非常に奇妙な特徴を新たに発見した。
それは、07年以降に刊行されている書籍に、旧ISBNが記載されている本が少なからず存在していたのだ。下の表は、第8回リスト中にみつかった旧ISBNで、末尾「X」となっているタイトルを抽出したものだ。
この表を見ると、07年以降に刊行された本が含まれている。当然、書籍に付されているISBNは13ケタなので、これは「幻のコード」といっていい。
出版関係者は、次のように解説する。
「多くの中古本を扱う事業者の場合、販売サイトには、すべての在庫に13ケタと10ケタのISBNを併記しています。そうしないと、古い本を探せなくなってしまうからです。一般の新刊書店の流通と異なるのは、07年以降の本でも、本体には印刷されていない10ケタのチェックデジットも計算して末尾に表示してある点です」
たとえば、新刊と中古を同じページで販売しているAmazon.co.jp(アマゾン)で本を検索してみると、13ケタと10ケタのISBNが併記されている。
「アマゾンの場合は、自社販売商品すべてのジャンルにふられている独自コード『ASIN』が10ケタです。そのため、それと統一するために、書籍の場合は新しい商品にも、わざと古いISBNをつけて、より商品を探しやすくしているのです」(前出・出版関係者)
アマゾンでは、中古事業者が個々の商品ページに登録して、自社商品を販売させる出店システム(マーケットプレイス)が用意されている。当然、そこに出店する事業者は、アマゾンのコードに対応したデータベースにするのだが、旧コードは版元が自ら登録するという。
ある老舗出版社の営業担当者は、こう明かす。
「新刊を出したとき、アマゾンにうちから直接新刊の写真をアップするのですが、そのときに旧ISBNの登録を求められます。いまや10ケタを扱うのは、そのときくらいです」
このように、アマゾンが旧ISBNを自社の標準コードとして採用しているように、ほかにも旧ISBNを使い続けている中古事業者がいる可能性はある。
つまり、新しい商品にわざわざ古いISBNをつけているということは、ツタヤ図書館の選書に中古事業者がなんらかのかたちで関与している可能性が高いといえる。次回以降、疑惑をさらに追及し、CCCや関連業者にも直撃した内容を紹介したい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)