東電への電気代不払いプロジェクトの実態…原発推進を図る東電・政府に抗議
「1円不払いと同じ手はずで郵便局のATMで1円多く入力して払います。数日後に東電から1円の返金について手紙が届くのですが、そこにはa.来月分の電気代に充当、b.お客様の口座に返金、c.直接東電社員が自宅や職場まで持参、からどれかを選ぶように言われます。aかcを選び返信し、cの場合は原発反対の意思を社員に伝えられます」
もっと効率的なのは、赤く印字されている払込用紙(入手希望者はtoudenfubarai@gmail.comへ申し込み)、すなわち加入者(この場合は東電)が手数料120円を支払わなければならないので、1円のために東電は120円支払い、加えて家まで来るとなれば人件費や交通費もかさむ。
なお、この払込用紙はATMでなく窓口で使用可能だ。窓口払いすることによって東電に120円出させるわけである。なお、プロジェクトのブログ・トップページ左の「ビラ」(http://d.hatena.ne.jp/toudenfubarai/files/fubarai_bira.pdf)をクリックし印刷して使用することも可能だが、たまに窓口で拒否されることもあるので、上記のメールアドレス宛てに申し込み、現物を受け取ったほうが確実だという。
ところで、原発に反対したり事故やその後の対応に抗議するために、1円少なくではなく、1円多く支払うことにどのような意味があるのだろうか。
「不払いの場合は、再請求か送電停止のどちらかを東電はやってきます。過払いの場合は、送電停止はできません。一度預かった余分な1円を返すために、内部でかなり複雑な手続きが必要になり、コストもかかるのです。
また、1円の返金を受ける場合は、こちらのペースで決められますし、抗議はしたいし不払いもしたいが電気を止められるのは困る、という方にはおすすめの方法です」
●一揆を起こしたら来年の年貢は上がるのか?
「1円余計に払うなど嫌がらせ的だと言われることもあります。多いのは、『電気代を払わないと電気を止められるからできない』。あるいは『東電は確かにひどいけど、抗議でコストがかかると電気代に上乗せされてしまう』と言われたこともありました。
でも、その考えは『お代官様は確かにひどいけど、一揆(抗議)をしたために、来年の年貢を上げられてしまう』と言っているに等しいと思います。それに、抗議をやめておとなしくすれば、東電は原発再稼働を中止するのでしょうか」
最後に大富さんは次のように強調した。
「なにはともあれ、自動引き落としの停止が最初の一歩にして最重要だと私は考えているんです。引き落としをやめて自分で支払うと、毎月いくら電気を使っているか正確にわかるし、自然と節電するようになり、電気代も下がっていきます。
自動引き落としを電力会社がすすめているのは、消費者が意識せずに電気を大量に使うことを期待しているからではないですか。不払いするかしないかは別として、すべての人に自動引き落としをやめてほしい。これがいま一番伝えたいことです」
現在、どれだけの不払い(正確には一時不払い)が広がっているかは電力会社のみが知る。ただ、プロジェクトの別のメンバーによると、カスタマーセンターでのやり取りに困っているとか、いろいろ相談のメールや電話が来るようになったので、不払い者は確実に増えているようである。
政府が支える独占企業に消費者や市民がどれだけ対峙できるか。電気代不払いプロジェクトは、現代の百姓一揆のようなものかもしれない。
(文=林克明/ノンフィクションライター)