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小林敬幸「ビジネスのホント」

朝鮮半島から数百万人の難民大挙が想定される日本が、スウェーデンに学ぶべき国家戦略

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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朝鮮半島から数百万人の難民大挙が想定される日本が、スウェーデンに学ぶべき国家戦略の画像1マルメ市

 私は3月、3週間ほどスウェーデンの移民都市マルメに滞在していた。スウェーデンで3番目に人口の多いマルメ市は、人口の3分の1が海外生まれの移民の町だ。トランプ米大統領が2月18日の演説内で「スウェーデンで昨夜起きたこと」と発言し、同国元首相が「なんのことを言っているのか。悪いものでも飲んだのか」と直ちに反論する場面があった。その2日後、ストックホルム郊外の移民の多いリンケビーで暴動が起きた。

 マルメは、10年近く前に移民居住地域で暴動が起こり、「あの治安の良いスウェーデンで」と欧州中の人を驚かせた。よって、今回のトランプ発言は、“マルメっ子”にとってもホットな話題になっている。

 トランプ大統領が演説の前日に見たというFOXテレビの番組では、スウェーデンが多くの難民を受け入れたので犯罪率が上がったと指摘しており、難民受け入れはスウェーデン国内でも真剣な議論になっている。

 スウェーデンは、EU諸国のなかではドイツに次いで2番目に多くの難民を受け入れており、人口1人当たりの難民申請者受け入れ数が欧州で最も多かった。2014年~15年で、24万人がスウェーデンで難民申請をした。スウェーデンの人口は1000万人にすぎないので、日本で同じ人口比なら一年で約100万人の難民を一旦は入国させたことに相当する。100万人というと、秋田県、香川県の人口と同じくらいだ。日本人には想像しがたい巨大な人数だ。

 欧州の人々も、豊かで安定した高福祉社会を実現しているスウェーデンが積極的に大量の難民を受け入れて、この先どうなるのか注視している。

マルメは、移民を上手に受け入れた都市?

朝鮮半島から数百万人の難民大挙が想定される日本が、スウェーデンに学ぶべき国家戦略の画像2『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』(小林敬幸/KADOKAWA/角川書店

 マルメ市民の話を直接聞いた私の結論を最初に言えば、マルメは「移民がアキレス腱になっている」というよりも、これまでのところは、移民の受け入れを苦労しながらも比較的うまくやってきた街といえるだろう。英BBCも3月7日にマルメについて好意的に詳しく報じている。

 OECD(経済協力開発機構)の報告では、マルメを世界で4番目に創造的な街としている。オランダのアイントホーフェン、アメリカのサンディエゴ、サンフランシスコに次ぐという。多様性があって、英語が通じて、新規の起業が多い。

 ベンチャーの起業も盛んに行われている。スカンジナビア半島で16年にスタートアップ企業が集めた資金が、最も多かった。世界で一日9700万人がプレイするというゲーム「キャンディークラッシュ」を開発したキングも、ゲーム「ディビジョン」のプロデュースをしたマッシヴ・エンターテイメントもマルメの企業だ。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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