筆者は当初、旧ISBNの本がリストに載っていること自体が、新刊リストに中古本が混入している証拠と考えていた。特にチェックデジットに「X」があるものが複数見つかったことで、10ケタのISBNが表示されている本は、すべて中古ではないかと疑いを持ったのだ。
ところが、話はそんなに単純ではなかった。
「東京の図書館をもっとよくする会」の池沢昇氏が詳細に分析した結果、次のような新事実が見つかった。
「第8回選書リスト5683冊中、10ケタのISBNは1705冊ありましたが、チェックデジット『X』は10冊です。『X』になる確率は11分の1ですので、1705冊がすべて旧ISBNであれば、『X』は150~160冊となるはずです。ところが、10冊しかないということは、旧ISBNの本は110冊前後である可能性が高いといえます。ほかの1600冊近くの10ケタISBNは、新ISBNの冒頭の『978』を落としただけではないでしょうか」(池沢氏)
実際に一つひとつ細かく検証していくと、ほぼその通りだった。第8回リストにある10ケタISBNのほとんどは、末尾のチェックデジットが13ケタとして計算されたものだったのだ。
業界内では使われない奇妙なコード
紛らわしいので本稿では以下、旧ISBNを「旧10」、新ISBNの「978」を省略したものを「新10」と呼ぶことにする。
同じ10ケタでも、チェックデジットとなる末尾の数字が異なる「新10」と「旧10」2種類のタイプがリスト中に混在していた。そこであらためて検証したところ、10ケタISBNの9割は「新10」だったのである。
そこで、出版関係者に「新10」のISBNを日常的に使用することがあるのか聞いてみたところ、一様に「そんなものは知らないし、使ったこともない」と口をそろえる。
取次などでも、一般的に使われるのは古いチェックデジットを計算して末尾につけた「旧10」であり、「新10」は業界ではまったくの「規格外」といってよい。
ただし、インターネットで本を検索できるサイトをつぶさに調べていくと、紀伊國屋書店など、一部のサイトでは「978」を省略しただけの「新10」のコードを入力しても、目的の本がヒットすることがわかった。
しかしそれは「978」を入れ忘れたとして、13ケタに読み替えて検索しているからであって、「新10」の形式が別に存在しているからではない。また、いずれかの業界で標準コードとして使用されているという情報もない。試しにアマゾンなどで、「新10」のコードを入力して検索してみると、ことごとく「一致する商品はありませんでした」となる。