昨年7月に俳優の三浦春馬さんが亡くなってから7カ月が経過したが、三浦さんの実母が今月17日付「デイリー新潮」記事で取材に応じ、胸中を語っている(詳細は18日発売の「週刊新潮」(新潮社)に掲載予定)。
三浦さんと母親の関係をめぐっては、これまで、母親が三浦さんや所属事務所アミューズとの間で起こした金銭トラブルがきっかけで、親子関係が断絶状態にあったとも報じられてきた。さらに、三浦さんが小学生の頃に両親が離婚し、親権を持つ母親が育ててきたが、その実父と母親の間で三浦さんの遺産相続をめぐってトラブルになっているとも伝えられてきた。
「母親とアミューズの金銭トラブルについて、アミューズはマスコミ各社からの取材に対して『回答は控えさせていただきます』と答えていたこともあり、両者の間でなんらかの確執があるのではないかとみられていました。もし金銭トラブルが存在しないのならば、事務所は明確に否定するはずですから」(週刊誌記者)
今回「新潮」の取材に対し母親は、金銭トラブルについて否定する一方、三浦さんと音信不通状態であったことは認めている。さらに「新潮」で母親は、三浦さんは5年ほど前から心身の調子が良くなかったにもかかわらず、アミューズの意向で働かされていたとも語っている。
「“周りの大人たち”(『新潮』より)が三浦さんを囲い込んで母親と連絡を取らせないようにしていたと話していますが、三浦さん本人が母親と携帯電話などでやりとりしたり、直接対面で会おうとするのを、事務所が止めるのは現実的に不可能です。
芸能事務所のなかでもアミューズは、所属タレントの私生活にあまり口を挟まず自由にさせる方針で知られています。“それが裏目に出て”という言い方が正しいのかはわかりませんが、過去には小出恵介(2018年に退所)が未成年女性と不適切な関係を持ったり、野村周平が素行の悪さをSNS上で指摘され一般人へ暴言を吐いたりなど、トラブルに発展したこともありました。
“タレントを縛り付ける”タイプとは真逆のアミューズが、いい年をしたタレントに対して、親子関係について“ああしろ、こうしろ”と果たして口を出すものなのか、少し疑問を感じます」(テレビ局関係者)
また、別のテレビ局関係者もいう。
「アミューズは芸能事務所では珍しく東証1部に上場しており、割とホワイトな企業体質だといわれています。ここ数年、ローラや能年玲奈(現のん)、清水富美加などの例もあり、タレントと芸能事務所間の契約内容や関係が問題視され、公正取引委員会まで動き出しているなかで、あのアミューズが、心身を崩している看板俳優を強制的に働かせていたというのは、ちょっと考えにくい。
また、母親が指摘している“事務所による囲い込み”というのが具体的に何を意味するのかは、よくわかりませんが、もし三浦さんが体調を崩していたにもかかわらず、アミューズが本人の意向に沿わないかたちで仕事を入れていたのだとすれば、三浦さんの自殺の遠因がアミューズにもあったということにもなりかねない。事務所としては看過できない発言だけに、今回の報道を受けて、アミューズとしてもなんらかの見解を発表するのではないでしょうか」
当サイトは1月11日付記事『三浦春馬さん逝去で考える…疎遠な親族に突然、多額の遺産相続発生、問題と対処法の知識』で、著名人などの死去で親族に多額の遺産相続が生じた際の対処について解説していたが、今回改めて再掲載する。
―――以下、再掲載―――
2020年7月18日、人気俳優の三浦春馬さんが自ら命を絶ち、その一報は日本中に大きな衝撃を与えた。死から早数カ月が経ったが、生前の三浦さんは親類縁者と疎遠だったために多額の遺産の処分をめぐり問題が生じているという一部報道もみられる。
そこで今回は、遺産相続に関する相談をいくつも請け負ってきた山岸純法律事務所の山岸純弁護士と、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表の鬼塚眞子氏に話を聞いた。
山岸弁護士の見解:清濁併せ持つ“遺産相続”について
まずは、山岸氏に遺産とはどういうものなのかについて聞いた。
「遺産とは故人が亡くなる時点で持っていた“客観的な経済的価値がある財産”を意味します。つまり着古した衣服、手紙や文房具、故人にとっては価値のあった記念品などは、客観的に見ると経済的価値はほぼないので“遺産”とは見なされず、故人と親しかった人などに相続人が贈呈する“形見分け”という形になります。
遺産の判定に関してさらにいうと、相続人が『価値がないのでいらない』と言ったとしても、現在フリマアプリなどで高額取引されているような物品であった場合は、遺産と見なされるケースがあります。
次に遺産の種類ですが、これは2つ種類があります。1つ目は、現金・貴金属・骨董品・預貯金・特許権・著作権・不動産といった、相続人にとってプラスの存在となる“積極財産”です。2つ目は、借金・分割ローン・他人の借金の保証といった、相続人にとってマイナスとなる“消極財産”です。遺産というとプラスなイメージばかり先行しますが、現実には清濁合わせて遺産なのです」(山岸氏)
必ずしも得するわけではないからこそ、遺産相続は複雑な問題をはらんでいるのかもしれない。加えて、山岸氏に一般的な遺産相続の流れについてもおさらいしてもらった。
「大前提として、被相続人(故人)による遺言書が残されていれば、その遺志を尊重した遺産分割が行われますし、その遺言書に遺言執行者が明記されていれば、相続人はその人が実施する遺産の分割手続きに従わなければなりません。つまり、法の許す範囲ではありますが、最大の力を持つのは“故人の言葉”なのです。
次に遺言書が残されていない場合ですが、これは2つの選択肢があります。1つ目は、法定相続分に従って分割する方法。例えば妻と子供が2人いる家庭の夫が亡くなったとき、妻に2分の1、子供にそれぞれ4分の1の財産がいくなど、分割の割合は法律で定められているんです。2つ目は、遺産分割協議といって遺族間の話し合いで決める場合です。ですが、この話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で調停委員の意見を踏まえつつ調停手続きを行うことになり、それでもダメならば、審判手続きにより裁判所に判断してもらうことになります」(山岸氏)
優先されるべきは“故人の遺志”というわけだが、それでもまとまらないときは司法のジャッジが下るということか。では、被相続人と親類縁者が疎遠な場合の相続については、どうなるのか。
「相続人の権利は、まず、故人の配偶者と子、次に兄弟姉妹という順に割り当てられるわけですが、“親類縁者と疎遠な場合”というのは、言い換えるとおおむね“配偶者も親も子もおらず、兄弟姉妹も先に亡くなっている場合”となります。このような場合は“兄弟姉妹の子ども”、要するに“甥や姪”が相続人と判断されます。また、故人に配偶者も子もおらず、両親が離婚しており共に暮らしていなかった場合も“親類縁者と疎遠な場合”といえますが、こういう場合は、故人との親密度に関係なく、相続権は第2順位の親になります」(山岸氏)
ちなみに、有名人の逝去などでは、よく「疎遠な親族ではなく、親しい友人が相続できないのか?」という声も挙がるが、山岸氏曰く「ほぼ不可能な要求」なのだそうだ。
鬼塚氏の見解:“保険トラブル”について
では次に、遺産のなかでも大きな割合を占めることが多い保険とはどういう存在なのだろうか。鬼塚氏に聞いた。
「まず、遺産相続の場面での保険は死亡保険となるわけですが、この要となるのは受取人、つまり保険が支払われる相手です。受取人は、保険の契約者(故人)の原則2親等以内である親か子になります。また、死亡保険は遺産のなかでも少々特殊で、例えば故人に多額の消極財産があるなどで相続放棄した場合でも、そうした意思とは関係なく、受取人に支払われるシステムになっています。また、受取人がたとえ多額の借金などを背負っていて、社会的な信用度が低くなっていたとしても、保険は受取人になっていれば支払われます。こういった背景があるため、“なんであいつにこんな保険額が支払われるんだ!”といったような親類縁者との間でトラブルの原因になりがちなのです」(鬼塚氏)
鬼塚氏によると、他の遺産との違いはほかにもあるという。
「死亡保険が特殊なところは、先ほど受取人は“契約者の原則2親等以内”と言いましたが、他の遺産と違い、故人が親類縁者と疎遠だったという場合や、両親から虐待を受けていたといった場合、2親等以外、つまり故人と親しい第三者でも受け取れるところです。もちろん契約者が申請書を提出し、保険会社による譲渡先の調査などを経る必要はあります」(鬼塚氏)
他の遺産とは異なるルールがあるからこそ、保険は遺産相続のなかで大きな役割を担うと呼ばれることが多いのだろうか。
生前から“どうしておきたいか”を考えておくことが大切
最後に、山岸氏と鬼塚氏に、遺産を残す側の本人がしておくべきことについて聞いた。
「死はいつ訪れるかわからないものです。ですから本人が“自分が死んだ後どうしておきたいか”を普段から明確に考え、可能な限り書面で残しておくことでしょう。書面の全文と日付、そして氏名を自ら執筆し、押印しておけば、基本的には遺言書として機能しますし、このような要件を厳格に具備していなくても、故人の遺志を図る何らかの手掛かりとなりますからね」(山岸氏)
「保険に関していえば、受取人を誰にするのか、考え直すタイミングを見逃さないことです。生前に認知症と診断されていない、つまり判断能力に問題がないならば契約後の受取人の変更は可能です。関係性の変化を放置しないこと、そしてその契約書がどこにあるか生前誰かに伝えておくことが大切でしょう」(鬼塚氏)
自らが及ぼす影響は、その死後も生まれるもの。“終活”が話題になることも多くなっていた昨今だけに、生きている間からそのことについて意識を強く持っておくことも必要なのかもしれない。
(文=A4studio)