10月14日に立憲民主党が東京・新宿で行った演説会は伝説になるかもしれない。長年、政治家の演説を聞いているが、労働組合、団体や企業の動員をせずに、ツイッターなどのインターネットで周知しただけで数千人が集まったのを見るのは初めてだ。
それだけ有権者は、今の政治に飽きつつも一縷の期待を枝野幸男代表に託しているのだと思う。一方で、希望の党の小池百合子代表や民進党の前原誠司代表には、不満どころではなくヘイトに近い感情が集まっている。本来であれば、安倍政権を打倒するためには野党が一丸となるべきだが、その足並みを乱した戦犯であるからだ。
応援演説に駆けつけた漫画家の小林よしのり氏が、「枝野氏は前の仲間を悪く言わないが、ワシは立候補していないから、あえて言う。小池氏と前原氏は、腹を切るべきである」と語ったところ、聴衆からは「そうだ」という声が上がり、笑い声も聞かれた。
そして、小林氏は結党の秘話を明かした。辻元清美氏から、電話で“排除”について「私はどうすればいいの」と相談を受けた際、小林氏は「枝野氏を代表にして新党をつくれ。枝野氏はやれる」と促したという。
小林氏の人気は高く、『おぼっちゃまくん』世代の女性グループが「よしりーん」と歓声を上げていた。さらに、「一水会」元最高顧問の鈴木邦男氏も登壇した。愛国者を自認する鈴木氏は、「昔は、改憲すれば日本はよくなると思っていたが、今はそうは思わない」と発言し、現行憲法の制定過程に触れた。
枝野代表が訴えたのは、以下の内容だ。
「選挙で選ばれ憲法で決められているから、国会議員は法律をつくる権限がある。内閣総理大臣は行政権という権力をあずかっている。自分の権力のもとになっている憲法を守らなければ、正統性はありません。権力があれば何をしてもいい。そんな傲慢な政治がまかり通っていいのか。
そして、民主主義はみんなで相談してみんなで決める。最後は多数決だ。しかし、国民に最大限納得してもらう努力をしない民主主義は、民主主義ではない。立憲主義と民主主義が動くことで政治は健全になる。こんな上からの政治は社会の分断を図り、政治離れが起きる。今こそ、草の根の民主主義が必要だ」
枝野代表の演説には、本当に力がこもっていた。
「小池って、仕事のできない典型例だよ」
演説終了後、筆者は聴衆に話を聞いた。まず、2人組の会社員男性に小林氏の「“小池氏と前原氏は腹を切るべき”発言についてどう思うか」と質問した。
「会社での会話だったら『腹切れ』なんて言わないけれど、私は、本心を言えば『前原も小池も腹を切るべき』だと思っていますよ。小林さんが言ったように、野党が分断されたのはこの2人のせいで、フラストレーションもたまっています。小池も、都知事として何かいい仕事をしたわけでもないしね」(50代男性)