衆議院選挙が終わった。数字上でみると、与党は改憲発議に必要な全議席の3分の2を上回る大勝であった。特に議員定数を10削減したなかで、自民党は解散前の議席数とほぼ同数を獲得するという「圧勝」だった。安倍晋三首相の続投は確実で、また来年に予定されている自民党総裁3選への道が開けた。公明党は改選前議席に到達せず、苦戦した。
一方、野党では今回の衆院選の話題の中心だった2つの政党は明暗を分けた。小池百合子都知事が率いる希望の党は、野党を統合する核になると結成当初は期待されたが、民進党を事実上吸収する過程で政治的なミスが相次ぎ、国民の信頼を著しく失った。その結果、小池都知事のお膝元である東京都の小選挙区ではわずか1議席にとどまるなど、改選前の議席にも至らずまさに惨敗した。
対して、枝野幸男氏を党首に掲げる立憲民主党は、安倍政権への批判票を多く集めて改選前議席の3倍超に至った。また、日本共産党は立憲民主党に政権批判票を奪われた結果、大きく議席を減らし、また日本維新の会も与党の補完勢力としての立場を事実上失い、大敗した。社民党も議席減、日本のこころは公職選挙法などの政党要件を失った。
さらに細かくみると、各マスコミで喧伝されている立憲民主党の“躍進”は、かなり過大評価でもある。まず議席数をみると、同じ安倍政権の批判勢力である共産党と元民進党議員などからなる無所属から立憲民主党に議席が入れ替わったとみれば、それほどの増加ではないともいえる。そもそも民進党が分裂したことにより、野党第一党となってもその政治力は激減であろう。
純化路線
野党同士の共闘関係も、改憲など基本政策で対立する、希望・維新、そして立憲・共産・社民との間には深い溝がある。しかも現段階では、枝野氏は立憲民主党の“純化路線”(経済評論家・上念司氏)を突き詰めている。つまり民進党の再結集というかたちを採用せずに、今まで政治的に自身に目障りであった旧党内の“大物”たちを排除し、立憲民主党内での枝野氏個人の権力集中を進めていくのではないか、という見方が有力である。
この種の“純化路線”は、完全に内向きである。仮に枝野氏が“寛容”な姿勢をみせて、希望の党から予想される離反者や、無所属の元民進党の議員たちを吸収すれば、国民から厳しく批判されるだろう。“純化路線”でも民進党再結集路線でも、どちらでも国民からはただの内紛ととらえられるリスクもあり、同党の先行きを不透明なものにする。