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森友学園の買える値段で事前交渉が判明…佐川国税庁長官と安倍首相が虚偽答弁

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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 会計検査院が作成した報告書87ページには、次のように書かれている。

「本件土地の処分等に係る協議記録等について提出を求めたところ、近畿財務局は、本件土地の処分等に係る大阪航空局や森友学園との協議記録等については、保存期間を1年未満としており、協議記録等を作成していたとしても、本件土地の森友学園との売買契約終了後等に廃棄することとしていたことから確認することができなかったとしている」

 つまり財務省と国交省は、国会での虚偽答弁だけでなく、会計検査院にも虚偽の事実を述べていたことがわかった。その結果、河戸院長は「懲戒処分要求につきましては、事実関係を踏まえ、慎重に検討する必要がある」と答えざるを得なくなっている。

 そして川内議員によれば、懲戒処分に当たるのは、払い下げ当時財務省理財局長だった迫田英典氏、そして近畿財務局長だった武内良樹氏、そして佐川氏らが該当するという。

 今、佐川国税庁長官の罷免を求めて多くの署名活動が行われているが、麻生太郎財務相は「適材適所」とかばっている。しかし、懲戒処分を受ければ退任は確実となり、麻生財務相と安倍首相の責任問題は免れない。

森友学園の買える値段で事前交渉が判明…佐川国税庁長官と安倍首相が虚偽答弁の画像5写真3:情報公開された文書その1「予約完結権の行使に係る書面について」

開示された情報公開文書

 1月27日付東京新聞は、この「新情報」の持つ意味を適格に報道している。『森友と「金額調整努める」国有地売却財務省に内部文書』との見出しで、「学校法人『森友学園』への国有地売却を巡り、10年以内に学園が国有地を買いとる条件で、国と定期借地中だった2015年12月、財務省近畿財務局が、将来の売却に向けた手順を検討し、『(学園と)売買金額の事前調整に努める』との方針を内部文書に記していたことが分かった」としている。

 この新情報で最大の注目点は、財務省内部で15年12月1日の段階で、格安払い下げについての相談を行っていたという事実である。これまでは格安払い下げのきっかけは、その翌年3月11日、校舎建設中に「新たなごみ」を建設業者が見つけ、森友学園から報告があったことだと説明されてきた。それが、その3カ月以上前の前年度末には、売却と価格調整の交渉のための準備を行っていたというのである。この事実は注目に値する。

 これまで財務省や国交省は、次のように説明してきた。

・15年、森友学園に土地を賃貸借していた時に、7月から12月にかけて土地の地下3mの深さまでの盛り土層から埋設ごみを撤去し、重金属で汚染されていた5カ所を除染する土壌改良事業を行った。その代金が1億3000万円だった。

・翌16年になって森友学園から校舎建設を請け負っていた藤原工業株式会社が、校舎の基礎杭を9.9mの深さに打ったところ、3m以深から「新たなごみ」が見つかった(基礎杭の数は数百本予定されていた)。
 
・その新たなごみの存在の連絡は、森友学園から同年3月11日に受け、3月14日に国も確認した。その量を国交省大阪航空局が推計したところ約2万トンになり、その撤去に8億2000万円かかるということだったので、土地の鑑定価格9億5600万円から値引き1億3000万円で売却した。

 このように、森友問題の核心点である格安払い下げ問題は、16年3月11日に「新たなごみ」が見つかったという報告から出発していた。その後、翌年の17年4月1日は小学校開校となるため、急いで撤去しなければならず、専門の第三者に頼むことなく、用地の所有主であった国交省大阪航空局がごみ量を推定し、その過程で格安の払い下げも起きてしまったという筋書きであった。

 しかし新情報の核心点は、東京新聞が報じているように、15年12月の段階で国は国有地売却の準備を行い、その法令上の検討すら行っていたという点である。

森友学園の買える値段で事前交渉が判明…佐川国税庁長官と安倍首相が虚偽答弁の画像6写真4:開示された文書その2「売買契約締結までの事務処理手順」

開示された新情報の核心点

 では、なぜ財務省はこの新情報について、会計検査院に嘘までつき隠そうとしたのか。

 その理由を示す資料が、前出の「予約完結権の行使に係る書面について」(写真3)と「売買契約締結までの事務処理手順」(写真4)である。そこに書かれている内容を見ると、国会での論議やこれまでの説明とまったく異なる事実が書かれている。

(1)森友学園に払い下げる準備を、15年12月に財務省内で相談していた。これまでこの事実は隠されていた。

(2)「予約完結権の行使に係る書面について」には、売買時の事務手続きについて、「国は、不動産鑑定士に土地の鑑定評価依頼を行った上で予定価格を算出して売買価格を決定することとなる」という文言が書かれている。しかし国は本件においては、16年3月11日に3m以深にごみがあるという伝達をうけ、急いで算定する必要があったので、不動産鑑定士に依頼することをせず、国交省大阪航空局の専門家に依頼したと説明してきた。では、15年12月から準備していたのならば、なぜ不動産鑑定士に頼まなかったのか。

 しかも、近畿財務局は12年の時点で、同用地の不動産鑑定を専門の不動産鑑定士に依頼して、鑑定評価書(写真5)を作成していた。したがってこの「予約完結権の行使に係わる書面について」の内容も正確ではなく、「すでにある鑑定評価書を参考に売買価格を決定すること」としなければならなかった(註1)。

(3)また「売買契約締結までの事務処理手順」のなかには、「予算を必要とする不動産鑑定士の鑑定評価まで行った後に学校法人が買わないとする結果にならないように売買金額については、できる限り学校法人との事前調整に努めるものとする」と書かれている。これについて東京新聞で上脇教授は「学園が買える値段で話を進めるのは、常識ではありえない」とコメントしており、森友学園を特別扱いしている証拠となる文書である。

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森友学園の買える値段で事前交渉が判明…佐川国税庁長官と安倍首相が虚偽答弁の画像9写真5:鑑定評価書

 以上みてきたように、格安払い下げの理由とされた新たな埋設ごみが存在するという根拠がないと、会計検査院は発表した。本来ならその時点で国は、間違いを認めるべきであったが、今まで隠していた情報を小出しにすることによって、論点のすり替えを図ろうとしている。籠池氏に開校が遅れれば損害賠償請求すると脅されたので、格安で払い下げたという論法である。一部大手マスメディアは、この論に乗っかった報道を行っているかに見える。そこで、改めて重要な事実を明記しておきたい。

・15年5月29日、賃貸契約に際して参考文書として示した文書によって、森友学園が払い下げを受けた用地の地下の埋設物の様子を国は把握していた。「平成23年度 大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務報告書」は、国交省自身が作成していた。(12年2月)。国と森友学園の賃貸契約書にも前提的な調査事実として掲載されていた報告書である。

・そこには、3m以上の深さにごみは無く、3mより浅い土地の部分にはごみが散在していることを把握していた。したがって、ごみがないことを知っていた国は、森友学園から損害賠償請求を受けたとしても、それは根拠がないと脅しに乗ることはなかった。脅されたから格安に値引いたというのは、明らかに虚偽の事実である。

 そもそも森友学園用地の3m以深に2万トンものごみがなかったという事実から問題を解き明かしていけば、官僚たちが不正に走った狙いがみえてくる。国会答弁で「私や妻が関与していれば議員は辞める」と約束した安倍首相がどう責任を取るのか、注目が集まっている。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

註1:17年末の国会論戦のなかで、森ゆうこ参議院議員が評価調書の存在を明らかにしていた。12年に大阪音楽大学が7億円で購入希望を出したときに、近畿財務局自身が不動産鑑定士に依頼し、鑑定評価書が出されていた。その評価書では、土壌汚染の対策に約4400万円、埋設ごみの撤去に8400万円の合計1億2800万円かかると算定していた。つまり、今回の事案で国が賃貸時の土壌改良工事費として支払っていた1億3000万円とこの金額はほぼ合致し、その支払いで埋設ごみの処理については手続きが終了していたのである。

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