確かに、北朝鮮に拘束されている3人の韓国系アメリカ人に関しては、米朝首脳会談の成果として開放されることで取引が成立しているといわれる。それほど、アメリカは北朝鮮との交渉チャンネルを確立しているのである。一方、日本の場合には、そうした独自のパイプがない上に、アメリカ頼みという状況のため、トランプ大統領の性格を思えば、どこまで日本のために金委員長を説得してくれるものか、情勢は楽観できない。
北朝鮮の常套手段
そうした情勢の下、朝鮮半島情勢の現状と今後を議論するため、3月下旬、ハワイでパシフィック・フォーラムCSISの総会が開催された。ハワイといえば、先に北朝鮮からのミサイルが到達するとの警報が誤作動したばかりである。アメリカの太平洋軍の司令部が存在することもあり、ホノルルは北朝鮮の脅威に対しては敏感になっている。この会合にはリチャード・アーミテージ元国務副長官をはじめ、政治、経済、安全保障の専門家がアメリカ各地から集まり、地元の米太平洋司令部の現役、OBも顔を揃えた。
まずは、アーミテッジ氏の問題提起で幕が開いた。現下の朝鮮半島情勢に照らせば、「北朝鮮の存在と脅威は現実のもの。決して友好的存在とはいえない。よって、軍事的能力と攻撃的意図を正確に判断する必要あり」というわけだ。中国やロシアの場合であれば、「共に能力はあるが、意図はない」ことは明白である。
しかし、こと北朝鮮となると、その意図を理解するのは容易なことではない。しかも、北朝鮮の場合には意図的に外国の理解をかく乱するために情報を秘匿するのが常套手段と化している。問題が危機とならないように国際的な対応が欠かせないという。
その点、「最大の同盟国である日本との協力がカギ」と繰り返すアーミテッジ氏である。特に、安倍首相の提唱する「インド太平洋戦略」は重要との認識であった。インドは中国の脅威を実感しており、モディ首相は日本、アメリカとも協調し、対中警戒路線を歩んでいる。
一方、「韓国はトランプ政権との交渉(ディール)を意図し、見返りを求めている。北朝鮮からは対米対話について正式の発言はない。すべて韓国政府経由であるため、その説明には100%の信用を置けるものか慎重に判断する必要がある」と分析。また、トランプ大統領は国務長官はじめ閣僚や側近を次々に解雇(ファイアー)していることを踏まえ、「大統領には信頼できるスタッフが不足しており、危険極まりない状態である」と率直な意見を表明。