5月10日、衆参の予算委員会に柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)が参考人として招致され、大きな関心を集めている。
今回の参考人招致は、「加計学園問題」をめぐって行われた。加計学園問題とは、“国家戦略特別区域”に指定された愛媛県今治市にある、加計学園グループの岡山理科大学獣医学部新設計画をめぐり湧き上がった疑惑のことだ。
加計学園の理事長が、安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏であることから、野党は「特区で総理の長年の友人が利益を受けている」と指摘。安倍首相は「彼(加計氏)から、この問題について頼まれたことはない」と疑惑を否定したが、2016年9~10月に文部科学省が作成した文書に、加計学園の計画について「総理のご意向」との一文が明記されていたことが判明し、野党が激しく追及している。
さらに今年4月、首相秘書官を務めていた柳瀬氏が、愛媛県職員などに対して「本件は首相案件」と伝えていた文書の存在が明らかになった。これについて柳瀬氏は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」とコメントを発表。国会は、この問題などをキッカケにゴールデンウィーク前から野党が審議に応じない状態が続いていたが、柳瀬氏の参考人質疑などを条件に、今月8日から正常化した。
そして、10日午前に行われた参考人招致で柳瀬氏は、「加計学園関係者の方と面会しました」と認めた。しかし、自民党の後藤茂之衆議院議員から“首相案件”発言について追求されると、「今治市の個別プロジェクトが首相案件になるという旨を申し上げるとは思えません」と回答し、獣医学部新設に関しても「安倍首相に報告したことも、指示を受けたことも一切ない」と否定した。
今回の証人喚問や加計学園問題をめぐる問題について、インターネット上では「安倍首相の親友と知りながら、加計側と何度か会っていることを『2年間、一切報告もしていない。話題にすらしていない』なんてありえない」「政権側は毎回、毎回、言葉遊びのような答弁。ノラリクラリかわしていけば、いずれ落ち着くと踏んでいるのだろうか。ずっと馬鹿にされている気がする」「こんな子ども騙しのウソを通すような国家運営では、日本はいずれ沈没するぞ」といった批判が上がっている。
日本共産党の宮本徹氏は、ツイッターで「加計学園側が総理及び官邸との個人的関係を生かしものごとをすすめようとしていったということ」「公募で選ばれる側の加計学園側が、今治市が国家戦略特区に申請することになったことを報告にいった。まさによろしくということではないか」と指摘している。
一方で、ネット上には「野党側は『加計学園問題は非常に深刻な問題』というが、国会でその話ばかりしているほうが深刻な問題なのでは?」「これじゃ『騒いで審議拒否した結果がこれ』って感じだし、野党の失策じゃないかな」「黒でも白でも無駄な税金。国際情勢が緊迫するなかで、もっとやるべきことがあるだろ」など、長い間にわたって同問題を追及し続けている野党側の対応を批判する声も多い。
東京・大田区議会議員のいぬぶし秀一氏はツイッターで、「日本の国会はお花畑ですね。中国、韓国の首脳が来日して対北を議論している時に、獣医師会の反対と忖度の争いなんかどうでもいい話です」と苦言を呈している。
注目される加計学園問題は、どのような着地点をみせるのだろうか。
(文=編集部)