挽肉料理の代表的なものは、ハンバーグでしょう。東京・銀座の老舗レストランでは、挽肉を店舗で挽いて、すぐにお客に提供しています。挽肉は挽いた瞬間から酸化し、おいしさが落ちていってしまうのです。
少し前までのスーパーでは、挽肉は店舗の中で挽いていました。しかし、人件費を削減するために、店舗内で挽肉を挽く作業をやめ、セントラル工場で挽き肉をパックし、各店舗に届ける方式に変更してきています。挽肉を購入するときに、挽肉に貼られている表示の加工所の住所を確認すると、スーパーの住所と異なるので確認することができます。
挽肉だけでなく、すべての肉の加工をやめるスーパーも出てきました。そうなると、お客が自分好みの厚さに切ってもらうこともできません。肉のおいしさも感じられず、酸化した挽肉を購入するしかない店になってしまっているのです。
原料は何か
とんかつなどで食べる豚肉は、一般的には産まれてから半年程度の豚です。スーパー等で売られている挽肉の原料のなかには、とんかつなどの肉と異なり「大貫(とんかつ等の肉の豚の親豚)」を使用したものがあります。大貫豚は3年以上飼育されているため、肉色は綺麗なのですが、獣臭がし、堅く感じられます。挽肉料理で獣臭がした場合は、スーパーに原料の豚は何か、問い合わせてみるといいでしょう。
鳥の挽肉も、60日程度飼育されているブロイラーではなく、卵を産んだ後の廃鶏(500~800日程度飼育された鶏)を使用している場合があります。「大貫、廃鶏を使用するな」ということではなく、私は仕様原材料欄に単に「豚肉」「鶏肉」と表記するのではなく、「大貫」「廃鶏」と表示すべきだと考えているのです。たとえば、鍋などの出汁を取る場合は、大貫や廃鶏のほうがおいしいのです。料理に応じた挽き肉を選ぶためにも表示が必要なのです。
豚肉のおいしさは、すなわち脂のおいしさです。豚肉の脂は、一般的に背脂肪がおいしいとされています。一方、腹の中についている脂肪は、柔らかすぎて料理などには使用しないのですが、挽肉に混ぜてしまうとわからなくなるため、混ぜているケースもあるのです。
部位がどこか
産まれてから半年程度の豚、3年以上経っている大貫豚といった豚の種類だけでなく、どの部位を使用しているかも、挽肉料理のおいしさにつながります。
餃子などは、脂肪が含まれたほうがおいしいので、バラの部位がお勧めです。肉団子などは、赤身がおいしい「もも」などがおススメです。
おいしい刺身は、良く切れる包丁で、手前に引きながら切ると、繊維が潰れずにおいしく食べることができます。挽肉も同様に、良く切れる「チョッパー(挽肉を切る機械)」で切るとおいしいものです。おいしい挽肉料理を食べるためには、目の前で確かな原料を挽いてもらい、それを調理することが大切です。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)