金正恩、詐欺師的交渉術でトランプに完全勝利…米韓軍事演習を中止させた巧妙な「仕掛け」
それを見て、世界の論調は北朝鮮寄りになりました。怒りに任せて会談を中止したトランプに対し、「金正恩は真摯な態度で核放棄を考えている」と受け止め、北朝鮮に同情が集まったのです。
ただ、実際には豊渓里の核実験場はオンボロで、北朝鮮にとっては閉鎖しても痛くない程度のものでした。それを爆破することで誠実さを示すと同時に、トランプに非難が集まり信用が失墜すれば、北朝鮮にとってはメリットしかありません。
しかも、トランプが会談中止を宣言した途端に、北朝鮮は異例の早さでトランプに謝罪文を送りました。その素早さを考えると、おそらくトランプが中止と言い出すことを想定し、あらかじめ用意していたのでしょう。
この時点で、北朝鮮はさまざまな可能性をシミュレーションしていたはずです。そして、仮に会談がなくなっても、北朝鮮は中国、ロシア、韓国への根回しが済んでいるので、アメリカがすぐに攻撃してくる可能性は低い。
そうした状況を綿密にシミュレーションしながら、自分の手の内を隠したままトランプに謝罪文を送り、動向を見守ったのでしょう。
さて、気になるのが日本への影響ですが、残り2つの「相手の弱みを逆利用する」「頭を抑えれば尻尾はついてくる」と共に次回に詳述したいと思います。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)