大学新卒の就活時期後ろ倒し、学生と企業への影響は?学業阻害、採用実数減の懸念も
今回からこちらで就職活動(就活)や大学関連の連載を始めました石渡です。タイトル通り、数回にわたりかなりぶっちゃけ話を展開しますのでお付き合いのほどよろしくお願いします。
あまり大きな話題にもならずに、大学新卒入社の就活後ろ倒しが進みそうです。改変時期は2016年卒業予定者。つまり、現在の大学2年生からになります。
就活時期については、後ろ倒し論(開始時期を大学4年夏に移行)、卒業後移行論(開始時期を卒業後に移行)などの案がこの10年取り沙汰されていました。2011年には13年卒業者の就活スタート時期を「大学3年10月」から「大学3年12月」に移行。一部の総合商社などは選考を大学4年夏に変更しました(なお、1996年以前の就職協定の変動については、雑誌「HRmics」の連載「就職温故知新」<8月頃>にて執筆予定です。サイトでも閲覧可能です)。
しかし、大学3年12月スタートでも、結局のところ、大勢は大学3年秋ごろから説明会を始め、大学3年冬から大学4年春にかけて内定(正確には内々定)を出すスケジュールが主流となっていました。
それが、あっという間に後ろ倒しが決まったのは安倍晋三内閣になってからです。政府が就活スケジュールを決めている(ことになっている)経団連に強く要請し、後ろ倒しが決まりました。
大きなポイントは就活の開始時期。現行の「大学3年12月広報開始・4年4月選考開始」から「3年3月広報開始・4年8月選考開始」に変わります。
この変更が、どのような影響を及ぼすのか? 今回は総論編ということで以下の8点についてご説明します。
【その1:理工系の学生が損をする】
理工系の学生は、4年生夏ごろから卒業研究が忙しくなります。この時期に選考が開始となると、どっちつかずになってしまいます。難関大学の理工系学部生はもともと大学院進学率が50~70%以上と異様に高く、それほど影響はありません。もし、後ろ倒しが実施されれば、大学院進学者の率はさらに高くなるでしょう。
一方、学部生以上に大学院生は研究で忙しく、後ろ倒しとなると就活に参加できなくなります。技術職・研究職採用は文系総合職採用とは別物、ということでなんらかの抜け道を企業側も検討するに違いありません。なんらかの抜け道がない、となると研究活動がいい加減になってしまいます。
問題は難関大学にしろ、中堅大学にしろ、学部卒で就職を希望する学生です。忙しい卒業研究を抱えながら就活をするわけですから、これは忙しい。大学院生同様、なんらかの抜け道を企業側がつくらない限り、どちらも中途半端となる学生が続出するでしょう。
さらに理工系学部には技術職・研究職志望だけでなく、総合職志望の学生もいます。この場合、企業は特別な便宜を図るわけではありません。それでいて、忙しい卒業研究。これは厳しい。結局、大学側が折れて、卒業研究がいい加減な学生が続出しそうです。
【その2:教員・公務員併願者が激減する】
公務員試験・教員採用試験、ともに時期はもともと4年生の春から夏にかけて実施されています。それから教育系学部・教職課程の教育実習が実施される時期は4年生の6月ごろが多いようです。理由は、受け入れる学校側に大きな行事がなく、余裕があるからです。9月実施もありますが、教員採用試験のスケジュール(夏ごろ実施)を考えると面接で話すネタがない、ということで学生側が敬遠する、という事情もあります。
これまでは公務員・教員志望で民間企業への就活を考える学生は、時期が微妙にずれていることから対応できました。しかし、それも後ろ倒しで難しくなります。
結果、教員・公務員志望の学生は、民間企業の併願は考えられなくなってしまいます。国家公務員志望の難関大生に対してはなんらかの抜け道が用意される可能性もありますが。