大学新卒の就活時期後ろ倒し、学生と企業への影響は?学業阻害、採用実数減の懸念も
採用する企業側はどうでしょうか。採用時期がいつであっても、志望学生が多い大手企業は、それほど損はしません。
問題は中小企業です。現行制度だと、まず学生は大手企業を受けていきます。当然ですが、多くの学生は大手企業から内定をもらえません。そのときに初めて中小企業に目が向くのです。
しかし、後ろ倒しによって採用期間が短くなると、リクルートワークス研究所「大学採用構造に関する調査レポート」(12年4月)によると、11年卒の場合、採用実数が3.9万人減少(34.2万人→30.3万人)、就職率は6.2ポイント減少(62.8%→56.6%)と試算しています。
中小企業が無策のままだと、この試算は的外れというわけではなくなるでしょう。もちろん、中小企業側が無策であるはずもなく(それは大手企業側も同じ)、あの手この手で抜け道を探ることになります。
【その7:結局は長期化が変わらない?】
先ほどの試算、なぜそうなるかと言えば、大手企業がダメだった学生が中小企業に目を向ける期間が短くなり、卒業までに間に合わないからです。
卒業までに間に合わなくても、4年生夏に選考が始まり、内々定が出る時期は9~10月。この時期に内々定が出ない学生は続出するでしょう。その分、就活期間も後ろ倒しになり、卒業式間近まで就活を続ける学生も増えそうです。現行制度でもそこそこいますが、この数は激増するでしょう。
就活時期の終わりだけでなく、始まりも問題です。就職倫理憲章にしばられない外資系企業や中小企業などは早めに動き出します。大手企業も含め、色々と抜け道はあるわけです。この抜け道については別の回でご紹介します。
学生も学生です。意識の高い学生は早めに動き、社会人と接点を持とうとするでしょう。結局、広い意味での就活スタートは大学3年生のあたりからなんとなく始まる現状と、そう変わらなさそうです。
ここまで、総論をご説明してきました。次回は、大学、企業、それから学生のそれぞれ、損するのは誰で得するのは誰なのかについて、見ていきたいと思います。
(文=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)