大学新卒の就活時期後ろ倒し、学生と企業への影響は?学業阻害、採用実数減の懸念も
今回の後ろ倒しの目的は学生の学業の時間を確保するため、と言われています。ここでいう学生とは文系学部の学生のことでしょう。
では、文系学部生は本当に救われるのか? 結論から言えば、そんなに変わりません。ここでよく「学業の時間確保というけど、学生はそもそも勉強しないよ」「大学の勉強など就活には無関係だし」というツッコミをされる論客が多数います。これはこれでツッコミどころ満載なのですが、ここでは省略します。
後ろ倒しで文系学生に大きな影響が出るとすれば、就活後の話でしょう。卒業論文を書けなかった、あるいは単位修得数が足りなかったために留年した場合、内定取り消し、という事態にもなりかねません。現行制度では就活終了時期(多くは4年4~6月ごろ)から卒業まで余裕があるので、卒論などには大きく影響しませんでした。後ろ倒しになれば、大きく影響することになります。
【その4:就職情報会社は損?得?】
ナビサイトを運営している就職情報会社は、広報開始解禁と定められている時期から、採用広告の掲載を開始することになります。現行だと3年生12月、後ろ倒し実施の現2年生からは3年生3月。短期決戦となり、単純に考えれば採用広告を掲載する時期が短くなる分、就職情報会社は損をします。
ただ、現状でもすでにそうなのですが、実は広報開始時期はそれほど関係ありません。例えば、「リクナビ2015」(リクルート)などの現3年生向けのナビサイトは、すでにオープンしています。これは違反では? と思われた方もいるかもしれませんが、違反ではありません。
オープンはオープンでもグランドオープンであり、本オープンではないのです。グランドオープン後はインターンシップの情報や業界研究などの情報を提供しており、採用広告を掲載しているわけではありません。
「そんな詭弁が通るのか」とも思われますが、実にその通りです。その通りなんですが、この詭弁が通ってしまうのが就活関連業界の不思議さたるゆえんです。
後述しますが、短期決戦となり損する企業(特に中小企業に対して)に就職情報会社の営業が、「早めに企業情報を掲載しないと、学生が確保できませんよ」と強気でプッシュをするようにもなるでしょう。
そう言われてナビサイトにより依存する企業も当然出てくるでしょう。そう考えると、就職情報会社にとって、それほど損はしなさそうです。
【その5:就活ベンチャーは儲かる】
就活・採用支援関連のベンチャー企業はどうでしょうか。3年生10月開始から12月開始に移行した11年(13年卒業者対象)の就職倫理憲章改定の際、同時にインターンシップの実施要件規定も導入されました。
その結果、1日インターンシップを実施する大手企業は激減。この影響でインターンシップ推進の就活ベンチャー企業は大きな影響を受けたといわれています。本来は就業体験が目的であるはずのインターンシップを1日でやるのは会社説明会と同じ。それをインターンシップと言い張るなんてバカな話はないわけで、この改定だけはよかったと考えています。
今回の後ろ倒しに話を戻すと、就職情報会社と同様、就活期間が短くなる分、損をする就活ベンチャー企業は出てくるでしょう。が、就職情報会社以上に身軽なベンチャー企業は後ろ倒しの抜け道を色々と探し、そこで利益を得ようとします。それから、学生相手の就職有料セミナー・就活塾も盛んになっていく可能性があります。有料就職セミナー・就活塾についてはかなりグレー、というかブラックな部分もあって、私は強くは勧められません。
なんだか、就活・採用支援のベンチャー企業の悪口ばかりになりましたが、まっとうに稼ぐところもあります。後ろ倒しで好影響を受けそうなのは、内定者支援をやっている企業。今も内定者をいかにつなぎ留めておくかが重要ですが、後ろ倒しによって、その必要性はさらに高くなるでしょう。
採用担当者をそう簡単には増やせない企業向けに、採用支援業務をしているベンチャー企業も仕事が増えそうです。採用期間が短くなる(企業によっては長くなる)分、アウトソーシング事業の需要は増えるでしょう。それと、意外なところでは株主総会。6月に集中する株主総会は社員総出で準備しなければならないイベントです。当然ながら、採用担当者もその手伝いに忙しい時期。それが後ろ倒しによって会社説明会の開催がピークの時期になるわけです。これでは忙しく、アウトソーシングに頼らざるを得ない、というわけです。