内閣府が推計する名目GDP成長率の予測は、中長期の財政再建計画を含め、さまざまな政策決定に利用される。このため、非常に重要な推計であるが、その予測の的中確率はどうか。
以下の図表1は、内閣府の「国民経済計算(SNA)」や「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」等から、内閣府が予測した名目GDP成長率とその実績を比較したものである。この図表では、1998年度から2017年度までの20回分の予測と実績を掲載しているが、この20回のうち、実績が予測を上回っているのは5回(2000年度、03年度、04年度、10年度、15年度)のみで、残りの15回は実績が予測を下回っている。すなわち、内閣府の成長率予測の的中確率は25%(=5回÷20回)しかないことがわかる。
しかも、1998年度から2018年度における成長率予測(名目GDP)の平均は1.52%であるが、1998年度から2017年度の実績の平均は0.15%しかなく、予測は実績の10倍もの値となっている。
このような状況のなか、直近の予測(政府経済見通し)をベースとして、先般(2018年7月9日)、内閣府は経済財政諮問会議において、「中長期の経済財政に関する試算」(以下「中長期試算」という)の最新版(7月版)を公表した。
前回公表(2018年1月版)の中長期試算との比較を含め、そのポイントは以下のとおりである。まず、中長期試算では、高成長シナリオの「成長実現ケース」と低成長シナリオの「ベースラインケース」の2つのシナリオが存在するが、どちらのシナリオの成長率も概ね同じで、今回で大きな修正はなかった。
実際、2027年度における実質GDP成長率は、成長実現ケースで2%(前回2.1%)、ベースラインケースで1.1%(前回1.2%)であり、2027年度の名目GDP成長率は、成長実現ケースで3.5%(前回と同値)、ベースラインケースで1.6%(前回1.7%)である。
次に、国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)の対GDP比であるが、2025年度のPBは、ベースラインケースで1.1%の赤字、成長実現ケースでも0.3%の赤字となっている。
これは何を意味するのか。政府は6月に公表した「骨太方針」の財政再建計画で、PB黒字化の目標を2025年度に5年先送りしたが、それでも黒字化は達成できず、追加の歳出削減や増税といった改革が必要であることを意味する。