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筈井利人「陰謀論を笑うな!」

14万人の広島市民を殺戮した米国の原爆、「戦争終結早めた」論はいかに捏造されたのか?

文=筈井利人/経済ジャーナリスト

 タイムズ紙は、それ以前は放射能による被害について社会に警鐘を鳴らす報道をしていたし、原爆投下の際も他の米紙の多くは放射能の影響を読者に伝えていた。ところが原爆投下を境に報道姿勢が一変。終戦後も放射能の存在や影響を無視、矮小化、否定する報道を続ける。

 この報道姿勢の背景には、タイムズ紙と米政府・軍との特別な関係がある。同紙の科学記者、ウィリアム・L・ローレンスは、社主アーサー・ヘイズ・サルツバーガーの許可の下、軍の情報操作に協力していた。ローレンスはマンハッタン計画の全貌を知ることを許された唯一の記者であり、タイムズ紙に政府・軍の意向を反映した記事を書いたほか、トルーマン大統領の原爆使用声明や前述のラジオ演説を起草。原爆に関する軍の報道発表資料、メディア向けの「模範記事」のほとんどを執筆した。

 タイムズ紙はこの裏取引の見返りに、広島への原爆投下や日本の降伏について政府から事前に知らされる。こうした政府との共謀を背景に、タイムズ紙は「新聞社として組織的に政府の要請に従い、あるいは、政府の意向を忖度して、放射能の影響を隠蔽してきた」と井上氏は推測する。

 最近、トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩委員長、ロシアのプーチン大統領と一連の首脳会談で核軍縮への意思を示したが、米国内には「弱腰」などと批判の声もある。核軍縮の機運を一段と高めるためにも、原爆正当化の神話を事実によって突き崩す努力が欠かせない。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

●参考文献
井上泰浩『アメリカの原爆神話と情報操作』(朝日選書)
ガー・アルペロビッツ『原爆投下決断の内幕 悲劇のヒロシマナガサキ』(上下)鈴木 俊彦他訳、ほるぷ出版
Ralph Raico, Harry Truman and the Atomic Bomb, Mises Institute

筈井利人/経済ジャーナリスト

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