ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 水道民営化、JR北海道の二の舞いに?  > 2ページ目
NEW
荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

安倍政権が推進する水道民営化、国鉄民営化で実質経営破綻のJR北海道の二の舞いも

文=荻原博子/経済ジャーナリスト

 こうした状況を「水道」に置き換えてみると、恐ろしい未来が想像できます。今まで、日本の水道は「子どものミルクを水道水でつくって飲ませられる」ほど安全性が高いということで、世界的な評価を受けてきました。蛇口をひねって出てくる水がそのまま飲めるという環境に、外国人などは驚くようです。

 しかし、民営化によって民間事業者が運営権を持つと、当然ながら儲かるところにしか参入しないということになります。儲からないのであれば、料金を上げるか徹底したコスト削減を行うことになるでしょう。そうなると、地域によっては「水道料金は上がるのにサービスや水質は下がる」という現象が起きる可能性もあります。それは、今よりも「水道格差」が広がるということを意味します。

意外に大きい、水道料金の地域格差

 実は、あまり認識されていませんが、水道料金は管轄する自治体によって現在でもかなりの差があります。水道料金の1カ月当たりの全国平均は3215円(平成28年)ですが、以下のように地域によっては約8倍の差があります。

●水道料金が高い自治体
1.夕張市(北海道)6841円
2.深浦町(青森県)6588円
3.由仁町(北海道)6379円
4.羅臼町(北海道)6360円
5.江差町(北海道)6264円

●水道料金が安い自治体
1.赤穂市(兵庫県)853円
2.富士河口湖町(山梨県)985円
3.長泉町(静岡県)1120円
4.小山町(静岡県)1130円
5.白浜町(和歌山県)1155円

(※日本水道協会調べ、平成28年4月1日、家庭用20立方メートル当たり)

 なぜこれほどの差があるのかといえば、水質や地形などの自然要因と水道管の老朽度や水利権の構造などのインフラ要因、人口密度や需要などの社会的要因が自治体によって違うからです。

 日本の水道施設は高度成長期に一斉につくられたので、法定耐用年数の40年を超えるものがかなり出てきており、それらの整備や更新によって自治体の財政が圧迫されています。さらに、少子化で収入減のダブルパンチに見舞われています。

 そのため、水道料金はすでに自治体によって大きな差があるわけです。そうした状況を打開するために、今回の法案では「広域連携の推進」が盛り込まれているわけですが、これは必要不可欠でしょう。

 ただ、一方では、水道事業を民間に開放することによって、老朽化やコストの問題を民間事業者に肩代わりさせて自治体の財政負担を減らすという内容も盛り込まれていました。これは、一見すると自治体の負担を減らす手っ取り早い解決策のように見えますが、だからといって、水道料金トップの北海道夕張市に外国資本が参入して状況が良くなるということは考えにくいです。

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

『老前破産 年金支給70歳時代のお金サバイバル』 給料が上がらない、ローンが終わらない、子どもの将来が見えない、残業カットに増税、年金支給は先送り――ああ、お先真っ暗!「老後破産」などまだ“マシ”だ。「65歳まで働けばなんとかなる」「退職金で借金は帳消しにできる」「家を売れば老人ホームに入れる」こうした従来の“常識”はもう通用しない。やってみれば怖くない、家計立て直しの全て。 amazon_associate_logo.jpg

安倍政権が推進する水道民営化、国鉄民営化で実質経営破綻のJR北海道の二の舞いものページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!