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チベット山奥の急斜面になんの目的で…数百基の高い石塔の謎 千年以上前に建立?

文=水守啓/サイエンスライター
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いつ、誰が建てたのか?

 だが、そんな美しい石塔も、いまや多くが地震や風化によって崩れつつある。いったいこれらの石塔はいつ建造されたのか?

 実のところ、石塔とともに暮らす現地の人々も、いつなんの目的で建造されたものなのか、ほとんど何も知らないという。仏教僧らもなんの情報も持っていなかった。一部の石塔がヤクやポニーの小屋として利用される以外、放置されたままである。彼らは文字を持たず、記録を残す習慣もない。近年では標準中国語(官話)が普及しつつあるようだが、隣の村に行くだけで、言葉が異なることもあり、他の村々との交流も少なく、独自性を維持してきたといえるだろう。それでいて、4つの地域に渡ってほぼ共通した石塔が立っている。もちろん、それは調査を行うダラゴン氏らにとって決して歓迎すべきことではなかった。石塔の謎について、手がかりを得ることが難しいからである。

 歴史的な資料を調査した結果、ダラゴン氏は、石塔に関して明(1368~1644年)の時代の古文書に最初に書かれていることを知った。そのため、それ以前から存在していたことがわかったが、資料は乏しいのが現実である。

 科学的な分析を行うにしても、石塔は石でできているため、その建造年代を正確に割り出すことはできない。だが、石塔の内部に木材が使用されている個所がある。内部は空洞になっており、たとえば、各階の床は壁に埋め込むように渡された木製の梁によって支えられているのだ。そして、細い梯子をかけて昇り降りされていたと考えられている。

 そこでダラゴン氏は、2000年までに77基の石塔に家屋、寺、城を加えた建築物から108の木材サンプルを採取し、炭素年代測定を行ってみた。すると、それらは500~1800年前のものだと判明したのだ。もちろん、梁に使用された木材は、必要に応じて交換・修復されてきた可能性があるため、その年代を石塔の建造時期に当てはめるわけにはいかないが、古いものでは、少なくとも1800年以上前に建造されたことがわかる。

 そうなると、石塔の多くは崩れかかっているものの、現在まで残されていること自体、奇跡に近いといえるだろう。ヒマラヤの山岳地帯は、日本ほどではないかもしれないが、地震の多い地域である。一見、原始的でシンプルに積み上げられたように見える石造の塔に何か秘密があるのだろうか?

 限られた調査によれば、耐震性のひとつは、その独特の構造、つまり、星形断面にあり、壁の厚みの増す部分が控え壁の効果を発揮することで得られていると考えられるという。また、朽ちつつあるものも多いが、床を形成する木製の梁も構造的に貢献してきたと考えられている。

建造目的の謎

 肝心の建造目的はいったいなんなのだろうか?

 地元住民はそれを明確に把握しておらず、その説明は人それぞれだという。たとえば、ミニヤにおいては、盗賊のような敵の侵入に備えた見張り台であると考える人々がいた。コンポや丹巴県では、富と誇りのシンボルで、貿易によって富を得た者たちが建てたとするものもあれば、息子の誕生時に基礎がつくられ、誕生日を迎えるごとに各階が追加されていったとするものもあったという。

 ちなみに、石塔の先端部分は、かつては尖っていたとされる説もあるが、半分が削られ、ベランダのようになって残っているものもある。後者の場合、見張り台としての機能は果たせるといえるが、それだけで手の込んだ塔のデザインや構造を説明できそうにない。

 特に興味深いことは、石塔に開けられた入口または窓が、地面からかなり高い位置に存在するものが少なからずあり、そう簡単にアクセスできないことである。出入りのために、特大の梯子を要する場合もある。それは、敵を迎え撃つ際、防衛上、有利に働いたと推測する者たちもいる一方、住宅のような建造物と連結していない塔もあり、狭く孤立した不便な空間でもある。そして、石塔の周囲には、多くの場合、麦やトウモロコシなどが豊かに実る農地が広がっているのである。

 そう考えると、いったい石塔の建造目的に何が考えられるだろうか? ダラゴン氏をはじめとする研究者らは気づいていないようだが、これらの石塔の特徴は、奇しくもアイルランドに存在するラウンドタワーと共通する。代替科学の研究者として、筆者は7年前、拙著『宇宙エネルギーがここに隠されていた』(徳間書店)を通じてラウンドタワーの謎について説明したが、ヒマラヤの石塔も基本的に同じと考えられる。ご存じない読者からすれば、信じがたいことかもしれないが、それは、頭上から降り注ぐ電磁波や磁気エネルギーなどを受け止めるアンテナであると同時に、霊的儀式が執り行われた場であった可能性も考えられるのである。
(文=水守啓/サイエンスライター)

チベット山奥の急斜面になんの目的で…数百基の高い石塔の謎 千年以上前に建立?の画像3アイルランドのラウンドタワー(「Wikimedia Commonsより」写真=Sarah777)

【水守 啓(ケイ・ミズモリ)】
「自然との同調」を手掛かりに神秘現象の解明に取り組むナチュラリスト、サイエンスライター、代替科学研究家。現在は、千葉県房総半島の里山で農作業を通じて自然と触れ合う中、研究・執筆・講演活動などを行っている。
著書に『世界を変えてしまうマッドサイエンティストたちの【すごい発見】』、『ついに反重力の謎が解けた!』、『底なしの闇の[癌ビジネス]』(ヒカルランド)、『超不都合な科学的真実』、『宇宙エネルギーがここに隠されていた』(徳間書店)、『リバース・スピーチ』(学研パブリッシング)、『聖蛙の使者KEROMIとの対話』(明窓出版)などがある。
ホームページ: http://www.keimizumori.com/

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