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石渡嶺司「大学・キャリアのぶっちゃけ話」

就活後ろ倒し、どう対応?大学&就活否定論からの決別、抜け道活用…企業と大学への提言

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就活後ろ倒し、どう対応?大学&就活否定論からの決別、抜け道活用…企業と大学への提言の画像1「Thinkstock」より
 大学、就職、転職の分野に精通し、『バカ学生に誰がした?』(中公新書ラクレ)、『なぜ学生の9割は就活に疲れるのか』(主婦の友社)などの著書を持つ大学ジャーナリスト・石渡嶺司が、検討が進む大学新卒入社の就職活動後ろ倒しがもたらすさまざまな影響について解説します。

 今回は大学新卒の就職活動(就活)時期後ろ倒しシリーズの5回目、最終回として、すぐにでもできる提言編をお送りします。

 この手の提言というと、企業向けであれば「脱ナビサイト」とか、大学向けであれば「大学だって講義に魅力がないくせに」など、提言なのか罵詈雑言、夢物語なのかよくわからないものが多いようですが、ここではもう少し現実的な話をします。

●企業に向けた提言

(1)「留年学生配慮宣言」に署名する

 「留学生」の誤記ではなく、「留年学生」で間違いありません。

 よく、「1年近い海外留学に行くと、就活スケジュールに乗り遅れて留年必至」などといわれます。それから、留学以外でもボランティア、旅行など理由は色々でしょうけど、留年するかどうか悩む学生は少なくありません。ほかにも大学院生だと研究に忙しくて留年、という例も多いようです。

 そこで彼らが悩むのは「留年したら就活に不利じゃないか」ということですが、真っ当な理由による留年なら、採用側はそれほど気にしません。積極性を買う企業すらあるわけです。こういう学生を別枠で採用するなどとなると、話がややこしくなります。そこで「配慮」が必要になるわけです。具体的にはこうです。

「留学、学術研究、ボランティア、その他の理由による留年者に対しては採用の際に配慮をする」

 なんのことはない、現状の採用状況を追認しているだけです。何しろ、留学しようが留年しようが、採用側は個別の学生をそれぞれ判断していくだけなのです。この一言を宣言として出せば、留年してまで留学しようかどうか悩む学生は救われます。現状を追認する文言など簡単に出せるはずですし、それで学生が見聞を広めることができるなら、いいのではないでしょうか。

 実はこの提言については、経団連に加盟し研究部会などにも参加している、人事の偉い方に話をしたことがあります。結果はあえなく玉砕。「わざわざ言うまでもない」というのがその理由でした。「いや、ですからそこで気にして留学を断念する学生も多い、そういう学生のことを『内向的だ』なんだと非難だけするのはおかしくないですか」と話すと、それは嫌われました。

 経団連はあてにならないので、個別の企業でぜひお使いください。できれば、1社だけでなく、理念を共有できる他社と合同で表明していけば、大きな動きになるかもしれません。

(2)他社・学生団体等と組んでの業界セミナー・就活セミナーの開催

 要するに抜け道の勧めです。ただ、リクルーターなどは大手企業にしか通用しない手です。

 それから、業界セミナーを中小企業1社が単独でやっても、なかなか人は集まりません。そこで、ご提案したいのが数社と共同での開催。

 参加する学生は、何社か集まるものであれば、規模の大きさから興味を持つでしょう。実は昨年、私と何社か集まり就活セミナーを関西や岡山、山口などで開催したのですが、そこそこ人は集まりました。「そういうイベント自体初めて」という企業も多いでしょうけど、従来通りのやり方では、なかなか人は集まりません。これは一度、お試しを。

 こういう抜け道を躊躇する採用担当者や企業幹部の方もいるでしょうが、やったもん勝ちです。

(3)下らない大学否定論から決別する

 企業向けの最後は理念的な話を。こういう就活後ろ倒しの是非を論じる際、必ずと言っていいほど「大学が学業の疎外とか言うな。そんなに大学の勉強は素晴らしいのか? なぜ就活だけ悪者扱いされるのか? 後ろ倒しにしたところで学生は勉強などしないし、そもそも大学の勉強は就活には無関係」と言い出す就活コンサルタントなどが出てきます。この論に同調する採用担当者も一定数います。

 私はこの手の意見が大嫌いです。典型的な詭弁ですね。後述しますが、大学は大学でさまざまな問題点を抱えています。ビジネス社会で求められるスキルを十分に育成できていないのも問題点の1つ。

 しかし、仮に大学が下らない教育機関だったとして、それを理由に「就活の時期を言及する資格はない」と言えるでしょうか? 「大学が下らないかどうか」と「就活の時期云々」の話は完全に独立した命題です。それを一緒くたにするのは典型的な詭弁です。

BusinessJournal編集部

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