安倍晋三首相の訪中について、産経新聞の社説が批判的に書く一方、朝日新聞は「大歓迎」との論調で、ねじれたことになっているのは驚き。といっても、朝日新聞は北朝鮮やロシアとの関係がうまくいかない安倍首相が中国側に取り入ったというような、ユニークすぎる分析をしているのは困ったことだ。
これまでの保守系内閣と、朝日新聞など“偽リベラル”系の対立は、政権側が適当にマスコミに花を持たせたりしてきたので先鋭化しなかったが、安倍首相は一歩も引かないから、彼らも落としどころがみつからず、病的な安倍批判をしている。
私は、その病的な安倍批判を、9月に上梓した『「反安倍」という病 ―拝啓、アベノセイダーズの皆様―』(ワニブックス)で分析的に取り上げたので、本稿ではそのエッセンスをご紹介したい。
ちなみに、“偽リベラル”とは、国際標準でいえば極左ポピュリストに属するような主張をしながらリベラルを名乗る人たちを、私が拙著『「立憲民主党」「朝日新聞」という名の“偽リベラル”』(ワニブックス)で提唱した言葉だが、『「反安倍」という病』は、その続編である。
「アベノセイダーズ」と「安倍だからダメだーず」とは?
偽リベラル系メディアや一部野党の安倍批判は、そこだけ切り取ると、まるで政権末期のようだ。
その主張は大きく、以下のように分類できると思う。
(1)「アベノセイダーズ(世の中で不満なことはなんでも安倍首相に責任あり)」
(2)「安倍だからダメだーず(天変地異でも、スポーツの成績でも、悪いことはすべて安倍首相に原因あり)」
(3)「憲法のお陰だーず(平和が守れるのも、経済が繁栄するのも、政治の舵取りが良かったのではなく、憲法が良いからだ)」
与党である自民・公明両党は、国政選挙では5連勝だし、安倍内閣の支持率も歴代内閣の支持率と比べて上々のラインを維持しているが、「こんなひどい安倍内閣を支持する人が40%もいるのが信じられない」と怒っている。
希望の就職先に就職できないのも、五輪などで日本があまり勝てないのも、挙げ句の果てには大きな災害が起きるのも、すべて安倍政権のせいにする人たちは「アベノセイダーズ(安倍のせいだーず)」と呼ばれている。
2015年のパリ同時多発テロ事件の時、日本のツイッター利用者で「戦争法案の推進はテロを呼び込むものだ」と主張する人がおり、これを揶揄する言葉として用いられ、「#アベノセイダーズ」タグを用いることで広がった。
「安倍だからダメだーず」は、ほかの政権などと同じことをしても、「安倍首相だからダメだ」という輩だ。特に、憲法改正に賛成であるにもかかわらず、安倍内閣下での憲法改正には反対するというのが典型だ。
「憲法改正は国民的議論」をしっかり行い、「できれば与野党合意で」と言う一方で、「現在の内閣の下では、内容にかかわらず反対」と言うのでは、議論などする意味もない。それなら、数の力だけで憲法改正したとしても、それを強引だと批判する権利は野党にはあるまい。