これは何も韓国に限らず、原爆を落としたアメリカをはじめとして連合国の人々の大半は、原爆によって日本の戦争は終わったと思っているでしょう。沖縄戦が長引いているなかで、当時の日本は『国が焦土となろうと、徹底抗戦するんだ』というようなことを言っていたわけです。原爆という決定的な要因がなければ、いつどのようなかたちで戦争が終わったかというのは、なかなかわかりません。アメリカが原爆の加害の部分をどの程度認識したり反省してるのかというのは置いておいても、やっぱり事実として原爆というのは決定的な要素だったというのは、そう考えてもおかしくはない。
原爆のTシャツを着ていたことで韓国の人気グループがテレビ出演を取り消されたということで、日本と韓国の間で歪みが生まれているということは、CNNなどでも報じられましたけど、原爆に対して当事者であり、関心を持っている人が多い、しかも肯定的に受け止めている国民が多いアメリカで、ニュースになるというのは当然のことでしょう」
「対話を通じたお互いの理解」
今回の問題で、韓国と日本の歴史認識の隔たりが浮き彫りになったかたちだが、そこから何を学ぶべきだろうか。
「原爆Tシャツを着ていようがいまいが、BTSを好きな人たちは日本にはたくさんいるわけです。韓国で結成されたTWICEには日本人や台湾人のメンバーもいます。そういう交流が増えていることは総体としてはいいことですけど、それとともに歴史認識をめぐるギクシャクはこれからも表面化するでしょう。韓国の国民には、従軍慰安婦問題とか徴用工の問題など、植民地支配のわだかまりが残っている。日本としては、そのあたりの加害責任はぴんと来てないところがある一方で、原爆はすごく傷跡の深いものとして今でもあるわけです。こうした隔たりが現れたのが今回の事件だと思うので、お互いに理解し合いましょうよということで終わっていいのではないでしょうか」
BTSの所属事務所の謝罪を受け入れた、被団協の木戸季市事務局長は「こうした表現をめぐる問題では、対決や分断を煽るのではなく、対話を通じてお互いの理解を深めるほうが望ましい。核兵器とはどういうものなのか、何が問題なのかといった点をめぐり、話し合いをしていきたい。BTS側にもそう説明し、一致した」と語った。
BTSの所属事務所は11月16日には、当時、広島や長崎にいた韓国の被爆者が多く住む、南部・慶尚南道陜川郡を訪れ謝罪した。韓国原爆被害者協会は謝罪を受け入れBTSに理解を示す一方、協会のイ・ギュヨル会長は「日本はTシャツを問題視し、戦犯、加害者として謝罪するどころか世界唯一の被爆国であるかのように振る舞っている」と批判した。
お互いの理解を深めるためには、日韓双方の努力が必要といえるだろう。
(文=深笛義也/ライター)