筆者が熱気球フライトの現場を訪れた時は、シンガポールからやってきた家族連れが一緒だった。夫婦と小学生の姉妹、祖母の5人組。子どもたち向けのサプライズ企画だったらしく、真っ白な畑の上に置かれた熱気球を見つけたとき、子どもたちは「キャー」と歓声をあげ喜んでいた。
冬の富良野のアウトドア体験はスキーやスノーボード以外にもスノーモービル、犬ぞり、スノーラフティング、パラセーリング、ワカサギ釣り、乗馬など多彩。雪に触れることが少ないアジアからの客には魅力的に映るのだろう。富良野のインバウンド宿泊延数(宿泊客×日数)は、03年に5678だったのが17年には13万1637へと23倍に拡大した。
「そのうち富良野もニセコ(倶知安町)みたいになっていくかもしれない」と観光業者が漏らしていたが、その可能性は十分ありそうだ。
ホテル建設ラッシュ続く一方、京都では簡易宿所の廃業が急増
インバウンド増加に伴い、全国的に宿泊施設の建設ラッシュが続いている。東京、大阪、京都、福岡など、各地から新しいホテルの開業のニュースが届く。超高級コンドミニアムやリゾートホテルが建ち並ぶニセコでは、最近、キャビンスタイルホテルがオープンし、話題となっている。国道5号線に面した倶知安駅から車で5分ほどの場所に開業したのは「ファーストキャビンニセコ・ぽんの湯」。
ビジネスホテルとカプセルホテルの中間のリーズナブルな価格で泊まれるホテルで、大浴場(温泉)もあり、長めの滞在にはうれしい。インターネットの予約サイトでチェックしてみると、男性用のカプセルルーム(シングルベッド1台)が1泊7650円、4人部屋(ダブルベッド2台)は2万2780円となっていた(18年12月19日に検索)。
シティホテル、リゾートホテル、ゲストハウス、民泊と、インバウンドを受け入れる宿泊施設は多種多様だが、その一方で京都では最近、ゲストハウスなどの簡易宿所の廃業が急増している。
民泊新法の施行から半年たったが、京都市は規制が厳しく年間60日間程度しか営業できない民泊の届け出は少なく、通年営業可能な簡易宿所の届け出は2797件に達した。その一方で、廃業が昨年4月から11月までの8カ月間で97件あった。16年度は16件、17年度は73件だったから、かなりハイペースだ。競争が激化し、淘汰が始まったとみられている。
20年の東京五輪開催に向けて、官民あげてインバウンド大歓迎のムードが強いが、インバウンドをめぐる自治体格差、観光公害、宿泊施設の過剰など課題も山積している。
(文=山田稔/ジャーナリスト)