中国最大の経済都市、上海が事実上封鎖され、ソニーの現地合弁企業の操業が一時停止になっているほか、みずほ銀行がメインオフィスを一時閉鎖するなど、上海進出の日系企業1万社にも直接、間接的に影響が出ている。米テスラや台湾積体電路製造(TSMC)など半導体メーカーも操業停止に追い込まれている。
新型コロナウイルスの感染が急拡大する中国では、各地で都市封鎖(ロックダウン)が相次いでおり、ハイテク企業が集まる南部の広東省深圳市や東北部の主要工業都市である瀋陽市などに続き、国際金融都市である上海の経済活動の停滞は、習近平最高指導部にも大きな衝撃を与えているようだ。
上海ではオミクロン型など感染力の強い変異型が流行し、感染拡大が続いている。28日は新規感染者数(無症状含む)が4477人と前日比977人増と過去最多となり感染拡大に歯止めが掛からないため、これまで経済の影響を考慮して大規模な封鎖を避けてきた上海市政府も、今回の措置に踏み切ったという。上海は浦東地区で28日午前5時から4月1日午前5時まで、浦西地区は1日午前3時から5日午前3時まで閉鎖する予定だ。
ロックダウンの発表を受けて、市内では市民が食料や生活必需品などを買いだめする動きが広がり、スーパーマーケットでは野菜や肉などが品薄となっている。市東部の浦東新区では、スーパーや市場の営業時間を28日午前0時まで延長した。封鎖を前に食料を買い求める市民の長蛇の列ができた。
公共交通機関の運行を停止
米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によると、台湾系の工場で働くある従業員は「急にロックダウンが決まり、それを知ったのは前日の夜8時だった。一時はエイプリルフールの冗談かと思ったが、本当だとわかって、夜遅くまで遠くのスーパーなどに食料品などの買い出しに出かけてくたくたになった」などと語っている。
ロックダウン期間中は、対象地域でのバス、タクシーなど公共交通機関の運行を停止し、許可のない自家用車の通行も禁止する。地下鉄駅も封鎖。電気、ガス、水道、食料など生活インフラ関連以外のすべての企業に在宅勤務などを求めているが、株式・為替などの取引は通常通り実施されるという。
上海証券取引所のトレーダーはRFAの取材に「27日の日曜日に、上海市の警察から『取引所の正常な運営を確保するため、家に帰らず、職場で寝泊まりするように』と告げられた。とてもじゃないけれども、ずっとここにいるのは無理だ」と話している。また、ある市民は「都市封鎖で、いつも通っている病院にも行けず、糖尿病や高血圧、心臓病の治療ができず、生命の危機を感じている人も少なくない」と訴えているなど、市民生活にも深刻な影響が出ているようだ。
(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)