NHK党の立花孝志党首がテレビ朝日と『報道ステーション』の大越健介キャスターを提訴した。先週16日に出演した『報道ステーション』で大越キャスターから発言を制止され、精神的苦痛をこうむったとして、テレビ朝日と大越キャスターを相手取り、計10万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたのだ。
立花氏は最近、俳優の綾野剛と所属事務所のトライストーンに対して債務不存在の確認を求める訴訟も起こしている。それ以外にもNHK関連の訴訟をいくつも抱えているようで、訴訟好きのような印象を受ける。
訴訟好きで、何かというと提訴する人を精神医学では「好訴者」と呼ぶ。「好訴者」は、侮辱されたとか、権利を侵害されたとか主張し、全精力をひたすら告発、闘争、訴訟などに捧げる。その根底に潜んでいるのは、自分が法的に不利益をこうむったという被害者意識と自己の権利要求を通したいという熱狂的な衝動である。
「好訴者」本人は強い正義感に駆り立てられているのかもしれないが、周囲の目には独善的で、個人的な価値観に固執しているように映ることも多い。もちろん、これはあくまでも一般論であり、立花氏が必ずしもそうだというわけではない。
見逃せないのは、活動的な「好訴者」のなかには持続的な興奮状態にある人が少なくなく、軽躁状態の人もいることだ。立花氏は2018年10月4日にYouTubeに投稿した動画で「私立花孝志は[統合失調症]&[躁ウツ病]でした」と自ら告白している。その告白によれば、「ほとんど寝ない」「興奮する」「すぐに怒る」状態だった時期があり、何でもできるという全能感も抱いていたということだ。
こうした症状が実際にあったのだとすれば、立花氏自身が告白しているように躁うつ病(双極性障害)だった可能性が高い。この病気では、躁状態とうつ状態が交互に出現し、躁状態になると不眠、気分の高揚、多弁・多動、全能感などの症状が出現する。易怒的になる、つまり怒りっぽくなることもあり、ときには社会的ルールに反するような社会的逸脱行為も認められる。
先ほど紹介した動画を投稿した2018年10月の時点で、立花氏は「3年くらい薬を飲んでいない」と告白している。その時点では、立花氏自身が話したように「寛解」状態だったのだろう。だが、躁うつ病は再発しやすい病気である。自分でも気づかないうちに軽躁状態、さらには躁状態になっていて、周囲の目には社会的逸脱行為と映りかねない振る舞いを繰り返すことも少なくない。
また、立花氏は統合失調症とも診断されたと告白している。この病気では妄想がしばしば出現し、そのせいで自分の権利が侵害されたという被害者意識が強くなることもある。
立花氏は先述の動画で「いつまた病気に戻るかわからない」と話している。その通りで、躁うつ病も統合失調症も再発の恐れがある病気だ。だから、NHK党が有権者の支持を失わないようにするためにも、「異常にテンションが上がっていないか」と常に自問自答すべきではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)