27日付「文春オンライン」記事に、またしてもタレントの「あびる優」が登場。「あびる」は前週21日発売の「週刊文春」(文芸春秋)で、元夫で格闘家の才賀紀左衛門から受けていたというモラハラやDVを告発したほか、2人の長女・Aちゃんが違法に連れ去さられた状態であると訴えた。最新号でも、才賀側がAちゃんを洗脳している疑いがあると主張を続けている「あびる」だが、一方で28日発売の「女性セブン」(小学館)記事は、「あびる」がAちゃんに虐待やネグレクトを行っていたという才賀の主張を掲載。ほぼ同じタイミングで真逆の報道が出たことからも、騒動の収束にはまだまだ時間を要するとみられる。
「あびる」と才賀は2014年9月に結婚を発表し、15年5月にAちゃんが誕生。しかし、19年12月に「あびる」と才賀の離婚が公になり、才賀が同14日付のインスタグラムで「僕、才賀紀左衛門が親権並びに監護権(育児権)を持ち責任を持って育てていく事を表明いたします」と報告した(当該投稿は削除済み)。
一般的には夫婦が離婚すると母親が親権を持つケースが多いとされるため、当時、世間からも驚きの声が続出。そんななか、才賀は同19日配信の「AERA dot.」インタビュー記事で、元妻に親権や監護権を渡さなかった理由として「優の酒癖の悪さ、お酒との関わり方を知っているからです。その悪癖を考えると、どうしても娘を渡すことができません」と説明。以降、ネット上では「あびる」への批判が強まった。
ところが、今月21日発売の「文春」に「あびる」が登場して、そもそも才賀が勝手に離婚届を出していたことや、20年1月には彼女が親権者変更を求める申し立てを家庭裁判所に行っていたことを告白。そして、東京家裁が昨年2月、親権者を「あびる」とし身柄の引渡しを命じていたこと、才賀は即日抗告したが同4月に棄却されていたこと、さらには現在もAちゃんの引渡しが実行されないままになっていることなども明かした。
同報道を受けてか、才賀は今月21日付のブログで「娘の為になる行動を父親としての責務を全うするだけ」「言葉より行動が娘の家族の為になる」などと投稿。なお、才賀は交際相手のフリーライター・絵莉さんの妊娠を公にし、事実婚するということも発表していて、同26日付のブログには「娘と絵莉と生まれてくる赤ちゃんと平和に家族4人で生活を送りたい」とつづっていた。こうした発信から、やはり娘のAちゃんを「あびる」に引き渡すつもりはないものとみられる。
あびる優、幼い子どもを不適切な状況に
そんななか、27日付「文春オンライン」記事には再び「あびる」が登場。初めは「あびる」に会いたがっていたはずのAちゃんが「あびる」を「産んだだけのただのおばさん」と呼ぶようになったと主張。才賀側がAちゃんに刷り込みや洗脳を行った疑いがあるという。
一方、28日発売の「女性セブン」は、才賀サイドの証言を集めた記事を掲載。そこには、才賀紀左衛門と婚姻中に「あびる優」がAちゃんを一人、自宅に置き去りにして飲みに出かけたり、深夜にタバコの煙が充満するカラオケバーに連れて行ったりしていたという記述が。また、「あびる」は真夜中に帰宅すると、寝ているAちゃんを無理やり起こして腕を引っ張り上げ、Aちゃんが泣き叫ぶ場面をとらえた写真も掲載。才賀は「あびる」がAちゃんに虐待やネグレクトを行っていたと主張している。
週刊誌記者はいう。
「『あびる』が独身時代も結婚してからも頻繁に深夜や朝方にかけて飲み歩き、事務所の先輩である和田アキ子に飲みの場に呼び出されれば、すぐに駆け付けるというのは知られた話だし、酒癖の悪さも有名で今さら否定は難しい。『セブン』記事には、飲食店の店内で酔った『あびる』がハサミでAちゃんの髪を切る写真も掲載されているが、そこには酒の缶やタバコも映り込んでおり、『あびる』が幼い子どもを不適切な状況においていた様子がうかがえる。
一方、『あびる』は才賀からモラハラやDVを受けていたと主張しているが、結局、どちらが言ってることも“当たらずといえども遠からず”という感じで、“どっちもどっち”ということなのでは。確かに家庭裁判所は『あびる』への親権者変更を認めたわけだが、よほどのことがない限りは裁判所は親権を母親側に認めるのが現実であり、親権者変更だけをもって“あびる=正義”“才賀=悪”と決めつけるのは早計だろう」
裁判所、「親権者」の“母性優先”
前述した酒に酔った「あびる」がAちゃんにとった行動が事実であった場合、それでもなぜ裁判所は「あびる」への親権者変更を認めるという判断を下したのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
<子供たちへの虐待などは、「児童虐待防止法」によって厳しく規制されています。この法律は、子供たちへの暴行などのほか、「子供の世話をしない」ことについても虐待と定義しています。もっとも、「子供の世話をしない」については、正確には「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置」とされており、
・子供を家に数時間放置した
・酔って帰ってきて寝ている子供を起こして、、、
という程度では、「虐待」とは認定されません。
刑法が規定する「保護責任者遺棄罪(218条)」とバランスをとるためにも、子供の身体・生命に危険性が発生するような“放置”が必要とされるわけです(虐待が認定されるのは、たまにニュースになる、“母親の彼氏”と一緒になって育児放棄したり暴行を見て見ぬふりといった場合)。
ところで、離婚の際に「親権」が争われる場合に、こういうことがあったとしても、なかなか母親以外に親権が認められることはありません。子供が5歳程度までの間は、母親が薬物中毒者である場合や、犯罪を繰り返す場合や、具体的な「虐待」を行っている場合以外は、まず母親が「親権者」と指定されます。6歳あたりからは子供の意見も考慮するようになりますが、残念なことですが、やはり家庭裁判所は“母性優先”という考え方から逃れることができません。
平成28年頃、千葉家裁松戸支部にて「母親が親権者となった場合の、離婚後の父親と子供の面会交流に消極的な母親」と、「父親が親権者となった場合の、離婚後の母親と子供の面会交流に積極的な父親」とで、父親を「親権者」に指定するとても画期的な判断があり、私もはじめ法曹関係者が驚きと関心をしたことがあります。両親の離婚後も子供が同居していない親と数多く会えるように計画するという、子供を第一に考えているという父親の姿が「親権者」として相応しいとされたわけです。
残念なことですが、この判断はこの後、東京高等裁判所でひっくりかえってしまう(親権者は母親となる)のですが、この事件では、「親権者」を指定するにあたり「子供が親と会うという大切さをどのように考えているか」を考慮すべきという考えを世に示しました。
他方で、私も父親側で離婚調停などの代理人をするときもありますが、親権を確保したいという父親の「育児方針」を聞くと、残念ながらほとんどの場合が「母親に手伝ってもらう」「幼稚園の送り迎えはきちんとやる」という程度です。この時点で「母親」の「育児」には勝てないわけです。
「親権者」の“母性優先”について、いろいろ批判があるところですが、まず「育児」について(まだまだ日本では低い)母親、父親双方が協業していくという考え方・文化の確立が先決と思います>
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)