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木村誠「20年代、大学新時代」

早稲田大学教育学部で共通テスト利用の新方式、どう変わる?私大入試の注目変更点

文=木村誠/大学教育ジャーナリスト
早稲田大学の大隈講堂(「Wikipedia」より)
早稲田大学の大隈講堂(「Wikipedia」より)

 2023年度入試は「2021年度の大学入試センター試験から大学入学共通テスト(以下、共通テスト)への転換」と「2025年度からの新課程入試」の間の“無風”状態になるのではないか、という見方が一般的である。

 しかし、一見大きな入試制度の改革がない年ほど、実質的に受験生に大きな影響を与える変更が少なくない。2023年度も、大きな話題にはならないが、受験生にとって無視できない動きがある。それは、同じく“無風が続く”と思われがちな2024年度入試の受験生にもいえることである。

 私大入試に限ってみると、次の2点が注目のポイントになろう。

 まず第1の点としては、文部科学省の私大定員厳格化路線の変化である。若者の東京一極集中現象を抑制するため、東京の私大の定員厳守を目的として、入学者が定員オーバーしたときには私学助成を減額するペナルティを課してきた。現に、日本大学のある学部が入学定員オーバー状態でペナルティ対象となり、大騒ぎになったことがある。

 そのような事態を避けるため、多くの大学が厳格化路線以前は合格者を多めに発表することによって、入学手続き者が予想より多くなり、結果的に当年度の入学定員がオーバーしても、次年度に調整するなどの手を打ってしのいできた。文科省も、それを大目に見ていた。

 ところが、定員厳格化で私大も合格者を絞り込まざるを得なくなった。結果的に、入学手続き率の動向を見つつ、欠員が出そうになると追加合格者を発表する大学も少なくなった。これが結果的に、受験生に大きな混乱を与えることにもつながった。

 そこで、文科省は東京の私大の定員厳格化路線を維持しつつも、基準となる定員を入学定員から「収容定員」に変更した。学部ごとの入学定員ならその年次でオーバーしないよう厳格にしなければならないが、収容定員なら全学部が対象なので調整が効く。

 そこで、2023年度からは、欠員が予想されるときに追加合格を出すのではなく、「ある程度、欠員にならないように正規合格者を多めに公表する大学が増加する」と思われる。こうした手を打つことで、2021年度の上智大学のように、大量に追加合格者を出して注目されるような事態は避けられそうだ。

 すなわち志願者/募集人員の志願倍率は変わらなくても、受験者/合格者で分母の合格者数が増えて実質競争率は下がる可能性のある大学が多くなるであろう。

早稲田大教育で共通テスト併用方式が新登場

 第2の点として、2025年度からの新課程入試を踏まえて、共通テストを利用した選抜方式が増えているケースや、共通テストを利用する入試の教科数が多様化して、変更する大学が目立つことである。

 特に「新規ケース」の注目は、早稲田大学教育学部であろう。従来の英・国・地歴の文科系A方式、英・数・理の理科系B方式に加えて、共通テスト併用のC方式とD方式(生物学専修のみ)を新規実施することになった。

 C方式は、共通テスト5教科7科目、もしくは8科目(配点90点)と各学科・専修が出題する個別試験(配点150点)だ。この個別試験は、英語、国語、数学などの教科試験を課す場合と総合問題を課す場合がある。理学科生物学専修のみが実施するD方式は、共通テスト3教科5科目(理科2科目)と個別試験で行われる。ホームページでサンプル問題を公開している。

 また、初等教育学専攻と生物学専修で独自入試のB方式が廃止され、共通テスト併用方式のみとなり、同大の政治経済学部と同様の入試方式になる。

 募集人員は、学部合計でC方式とD方式が新設された分、独自入試のA・B方式で削減しており、今までの独自方式での共通テスト非受験組には狭き門になる。慶應義塾大学のように全学部で共通テストを利用する選抜をしないというポリシーの大学はあるものの、多くの私大受験生にとって、共通テストは受験戦略の上でも無視できない存在になっている。

上智大と青山学院大の対照的な共通テスト教科の変更

 ほとんどの私大で共通テスト利用入試を実施している状況で、むしろ受験生と関係が深いのは、その教科・科目数である。早稲田大学教育学部のように基本的には5教科7科目で、私大受験生よりも国公立受験生向きといえるタイプも多い。ただ、有名私大にも、共通テストでも3教科以下で受験できる私大受験生向きのタイプが増えてきた。

 たとえば、上智大学は、従来の4教科型の共通テスト利用方式に加えて、新たに3教科型を導入する。神学部、総合人間科学部心理学科と看護学科は別に面接が課されるが、その他の学部学科は共通テストの得点のみで判定される。私大併願の国公立大受験生はもちろん、文理別受験教科の試験対策をしてきた私大受験生でも、共通テストを受験していれば可能性は広がる。

 人気を呼ぶのは必須であるが、受験生にとっては募集人員が各学科2~3名(経済学部経営学科は5名)と少なく、個別試験なしでは“宝くじ並み”の競争率となりそうだ。ただ合格者の入学辞退も相当数予想されるので、合格者数は募集人員より多くなるであろうが、募集人員が少ないので、かなりの狭き門になることは間違いない。

 同様に、津田塾大学の学芸学部の数学科は共通テスト利用入試で科目数を減らすが、これも受験者増につながるであろう。

 上智大学の従来の4教科型では、文系なら数学Ⅰ、理系でも国語が課されるが、その選択のほうがプラスになるという考え方もある。新3教科型では文系は地歴公民と数学Ⅰからの選択、理系は国語と理科の選択となる。

 最近のキャリア志向を考えれば、文系でもデータサイエンスに必要な数学Ⅰ、理系ならデータの解釈や論文レポート作成に欠かせない国語(読解力)力を磨く受験勉強は、将来大いに役に立つからだ。

 その点で、青山学院大学が共通テスト利用入試で、文(史学)・法・総合文化政策・社会情報・コミュニティ人間科学などで、4科目型あるいは5科目型を追加したことは注目できる。国公立大受験生の併願を視野に入れてのことであろうが、上記のキャリアプランの視点からも評価できる。

中央大の法学部移転は法科大学院との連結がポイント

 2023年度の私大入試の話題で欠かせないのが、中央大学法学部の東京郊外・八王子市から都心・文京区の茗荷谷へのキャンパス移転であろう。あまり難易度に変化はないという見方が多いが、法科大学院との連結で司法試験対策の成果がどの程度見込めるか、という視点で、数年後の見通しも評価のポイントとなろう。OBも多いので、その実力を発揮する条件が整うと考えてよいだろう。

 学部新設では、立教大学のスポーツウエルネス学部と、東洋大学の福祉社会デザイン学部・健康スポーツ科学部の2学部が、収容定員の変更を伴う本格的な学部新設で注目されている。

 さらに、東北学院大学が仙台市中心部の新キャンパスに文・法・経済・経営の1・2年次と工を移転させ、さらに教養学部を改組して、地域総合・情報・人間科学・国際の4学部を開設する動きも見逃せない。

 また、愛知県名古屋市にある中部大学にも理工学部ができるが、既存の工学部があるだけに、受験生には戸惑いがあるようだ。

 関西圏では、龍谷大学に心理学部ができることや、京都女子大学に女子大初のデータサイエンス学部が新設されることが、なんといっても目を引く。

 入試では、甲南大学が一般選抜に中期日程を導入するが、関関同立では一部学部での変更点はあるものの、特記すべき情報はあまりないようだ。

 ただ、個々の大学の受験生にとっては、受験するうえで確認が必要な情報はあるので、入試要項や募集要項での確認を必ずしていただきたい。

木村誠/大学教育ジャーナリスト

木村誠/大学教育ジャーナリスト

早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『ワンランク上の大学攻略法 新課程入試の先取り最新情報』(朝日新書)。他に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)、『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

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