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野田元首相・追悼演説への杉田水脈氏と枝野幸男氏の論評が批判を浴びている理由

文=Business Journal編集部
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野田佳彦氏の公式サイト
野田佳彦氏の公式サイト

 野田佳彦元首相が25日の衆院本会議で、凶弾に倒れた安倍晋三元首相に対して行った追悼演説に、舌鋒鋭い保守派の論客たちからも評価が寄せられている。一方、“盟友”であったはずの枝野幸男前立憲民主党代表や、“渦中の人”である杉田水脈自民党衆議院議員らによる同演説に対するコメントにツッコミの声が上がっているようだ。

「あなたが放った強烈な光も、その先に伸びた影も問い続ける」

 野田氏は安倍元首相の遺影を抱え起立する昭恵夫人が傍聴席で見守る中、同僚の議員らに向け約20分に渡り、故人への哀悼の意を示した。

「安倍さん。あなたは、いつの時も手強い論敵でした。いや、私にとっては仇のような政敵でした」

「激しくぶつかり合う言葉と言葉。それは、一対一の『果たし合い』の場でした。激論を交わした場面の数々が、ただ懐かしく思い起こされます。残念ながら、再戦を挑むべき相手は、もうこの議場には現れません」

「勝ちっ放しはないでしょう、安倍さん……」

「国の宰相としてあなたが遺した事績をたどり、あなたが放った強烈な光も、その先に伸びた影も、この議場に集う同僚議員たちとともに、言葉の限りを尽くして、問い続けたい。問い続けなければならないのです。なぜなら、あなたの命を理不尽に奪った暴力の狂気に打ち勝つ力は、言葉にのみ宿るからです」

 論敵に対する“名追悼演説”としては1960年10月18日、衆議院本会議で池田勇人首相(当時)が、凶刃に倒れた淺沼稻次郎日本社会中央執行委員長に対し、次のように読んだものが有名だ。

「今その人はなく、その声もやみました。私は、だれに向かって論争をいどめばよいのでありましょうか。しかし、心を澄まして耳を傾ければ、私には、そこから一つの叫び声があるように思われてなりません。『わが身に起こったことを他の人に起こさせてはならない』、『暴力は民主政治家にとって共通の敵である』と、この声は叫んでいるのであります」

 野田氏は国会の歴史的な“美風”を意識し、今回の追悼演説を準備したようだ。17日に自身の公式サイトで公表した『追悼演説を前に』と題するブログで、野田氏は次のように述べている。

<松井孝治慶大教授は、「激しい論戦をしていても根底には相手への敬意がある。死は究極のノーサイド。死が論敵と自らを分かつときにはその旅立ちにエールを送る。それが議会制民主主義の根幹であり、追悼演説はそれを体現した美風であるはずです」と、述べています。全く同感です>

立憲・枝野氏「四方を称賛”させる”名演説」?

 国会での追悼演説をめぐっては当初、安倍氏と懇意だったある自民党議員を推す声が同党内で大きかった。紆余曲折を経て10月7日、「ご遺族の意向、自民党の総意だ。第2次安倍政権が誕生する直前の首相で、重圧と孤独を経験された野田佳彦氏が最もふさわしいと考えている」として正式な打診があっとことを野田氏は前述のブログで説明している。

 しかし、野田氏が追悼演説を引き受けるのにあたって、気にするべきは与党自民党だけではなかったのかもしれない。野田氏の演説について、立憲民主党前代表の枝野幸男衆議院議員は自身の公式Twitterアカウントに以下のように投稿した。

「一歩間違えたら四方から批判を浴びそうな場面で、四方を称賛させる名演説でした。野田さんの演説力と、何よりも包摂する人柄が表れていました。ぜひ予断なくご覧ください」

「『この演説を生で近くで聴けて良かった。』最近は感じることの少なかった思いを、今日は強く抱きました」(原文ママ)

 この投稿に対して以下のようなツッコミが寄せられていた。

「称賛は『される』ものであって『させる』ものではありません。『させる』とは、本当に失礼な物言いです。私は、称賛『しました』」

「四方を称賛させる名演説でした  『四方から称賛される名演説でした』ね」

「野田元首相の演説が日本の政治史に残る素晴らしいものであったことに異論はありませんが、批判を浴びせたであろう『四方』とはどの方向でしょうか? せっかくの素晴らしい演説のあと味を悪くするような表現は、政治利用とも捉えかねませんので控えられたほうが賢明かと存じます」(いずれも原文ママ)

 実際、野党内で野田氏の演説はどのように受け止められたのだろう。国会担当記者は次のように語る。

「(演説は)全面的な礼賛というわけでもなく、安倍さんの“影”の部分にも言及し、同僚議員に問い続けることを訴えていました。

 党派や主義主張を超えて、言論の府のメンバーであれば誰でも共感できる内容だったように思いますが、演説が終わった後、拍手をしなかった議員もいましたよね。それがすべてを物語っています。

 山際大志郎経済再生相の辞任という旧統一教会問題の追及が山場を迎えたタイミングで、“野田さんの追悼演説によって安倍さんを持ち上げることになる”と不快感や陰謀論的な言動を持ち出す野党議員もいました。旧統一教会の追及は今後も続きます。それはそれ、これはこれでしょう。野田さんも述べられているように、戦争中であってもノーサイドはあるのです。今回の追悼演説はそういう局面だったと思うのですが」

保守の論客、杉田水脈氏も大絶賛したが……

 保守の論客として知られる自民党の杉田水脈衆議院議員も野田氏の演説を絶賛した。

 東京高裁は20日、性暴力被害を公表したジャーナリストの伊藤詩織氏(33)が、自身を誹謗ひぼう中傷するツイッター上の投稿に「いいね」を押され名誉を傷つけられたとして、杉田氏に220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で「社会通念上、許される限度を超える侮辱行為」と認め、請求を退けた一審・東京地裁判決を変更し、杉田氏に55万円の支払いを命じた。

 杉田氏の前述の投稿に対する「いいね」は26日午前11時現在、4944件に上っている。一方、伊藤氏に謝罪や賠償の支払いを求める声も散見された。

(文=Business Journal編集部)

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