立憲民主党の前衆議院議員・尾辻かな子氏がTwitterで公開した駅広告の写真が物議を醸している。「女性の性的なイラスト」であるとする尾辻氏の意見に対して賛否が寄せられ、作家の乙武洋匡氏も参戦するなど波紋が広がっているようだ。
尾辻氏は今月26日、自身のTwitterに「JR大阪駅の御堂筋口。こんな広告が…。2022年の日本、女性の性的なイラストが堂々と駅出口で広告になるのか…」とつづり、JR大阪駅で撮影したという4枚の駅広告の写真を投稿した。広告は対戦型麻雀ゲーム『雀魂(じゃんたま)』と人気麻雀アニメ『咲-Saki-全国編』のコラボ開催を告知するもので、駅通路の柱にバニーガールや水着などの肌の露出の多い衣装をまとった女性キャラクターの姿が描かれている。
尾辻氏はその是非をはっきりとは示していないが、「女性の性的なイラスト」という言葉からは否定的なニュアンスが感じられる。これに対して、ネット上では「大阪駅の御堂筋口って外国人観光客の方もたくさんいらっしゃるから、どう見られているのか不安」「こういった公共での女性(特に未成年者)の表現に対して無自覚なのは恥ずかしい」「性的な表象が子どもに与える影響について、日本はもっと丁寧に考えていかなければ」などと、尾辻氏に賛同するコメントが相次いだ。
だが、その一方で「本当に性的だと思ってるなら、無加工で誰でも見られるTwitterにアップするのは矛盾してますね」「R18でもないなら、性的か否かを判断するのは主観のみです。一度、ご自身の主観を疑われてみては?」「多様性が大事と言いながら、何が性的なのかも提示せずに感情的に特定の表現を潰そうとしている」といった批判も殺到。尾辻氏の問題提起の仕方や表現そのものの是非などについて賛否両論が起きている。
そんななか、作家の乙武洋匡氏が別角度からツッコミを入れて話題を呼んでいる。乙武氏は27日、自身のTwitterで尾辻氏のツイートを引用しながら「相撲とか『anan』の表紙って、誰も『性的』だと言わないよね。なんで男性の裸体はいいんだろう?」と疑問を投げかけたのだ。投稿には女性誌「anan」(マガジンハウス)の表紙画像が添えられ、俳優の横浜流星が胸元や腹筋をあらわにした姿が写っている。
お相撲さんの上半身裸の等身大パネルは…?
これについて、一般ユーザーが「この手の問題、いつだって必ずananを引き合いには出さないといられない人が現れるが、あくまで『駅の広告としてどうなの?って話』なんだよね。相撲やananのように目に入れない選択ができない類の問題に関して、男だからいいとか女だからダメとか関係ないと思う」と指摘すると、乙武氏は金沢駅に人気力士の遠藤、輝、炎鵬の上半身裸の等身大パネルが展示されたというニュースを引用して「だとしたら、この企画は炎上してしまうはずなんですけど、そういう批判的な声は聞いたことがないんですよね」と反論した。
また、別のユーザーから「保育園や学校で配布される資料で、男の子の『プライベートゾーン』は下半身のみとされているからでは」といった意見が寄せられると、乙武氏は「保育園や学校は、どういう理由から『男の子の上半身はプライベートゾーンではない』と定義しているんだろう?」と疑問を呈した。
この乙武氏の意見に対しても、「別にすべての女性がananみたいな表紙を『問題ない』と思ってるわけじゃない」「詭弁で女性の声を消そうとしているように思える」「実際、イケメン男性の上半身裸の女性向け広告は普通にあって批判されないのは矛盾だよね」「お相撲さんはなぜいいのかという視点は目からうろこ」などと賛否が寄せられている。
最近は女性を描いた広告イラストなどに対して「性的だ」「環境型セクハラでは」といった批判が起きるケースが相次いでいるが、その理屈を突き詰めると「男性の描写はどうなのか」「もし男女ともすべて規制したらみんな幸せなのか」という議論に行きつくのも理解できなくはない。そうした部分も含めて、尾辻氏の問題提起や乙武氏の指摘は今後も議論を呼びそうだ。