愛知県の「ジブリパーク」において、一部利用客が少女への性犯罪を想起させる写真を撮影し、ネット上に拡散されたことで物議を醸している。運営側が事態を把握しながら「ノーコメント」を貫いていることについても批判が生まれているようだ。
スタジオジブリ作品の世界観を再現したジブリパークは、愛知県が総事業費約340億円をかけて整備し、昨年11月に長久手市の「愛・地球博記念公園」内に開園。施設内のフォトスポットには、各作品のキャラクターの像やセットがあり、物語の中に入り込んだかのような写真を撮ることができる。
ところが、展示された女性キャラクターの像が一部入場者の不適切な写真撮影のターゲットに。『思い出のマーニー』に登場する少女・マーニーのスカートの中を背後からスマホで盗撮しようとしたり、誘拐犯に扮して連れ去ろうとしている設定で像の口をふさいだり、『ゲド戦記』のヒロイン・テルーの胸を後ろからつかんだりしている写真などが2月下旬ごろからSNS上で拡散された。
この件について「女性自身」(光文社)のWEB版が、2月24日付の記事でジブリパーク広報事務局に見解を問うたが、「今回の件に関しまして、ノーコメントとさせていただきます」として回答はなし。その後も各メディアの取材に施設側は一貫して「コメントは控えさせていただく」と答えている。
SNS上では、不適切な写真撮影をしている入場者たちに対して「本当に気持ち悪い」「そういう目で少女像を見ている人がいると、子どもたちが安心して遊べない」「作品を冒涜する行為」といった非難の声が巻き起こっていたが、施設側の「ノーコメント」対応についても波紋が広がった。
多くは「毅然とした対応をすべき」「キャラを守るためにも不問にしないで」という意見で、中には『千と千尋の神隠し』の湯婆婆の名ゼリフになぞらえて「ノーコメントってなんなんだろ。『お客様とて許せぬ』だろそこは」といった意見もあり、共感を呼んで広く拡散されたことで「お客様とて許せぬ」がTwitterでトレンド入りする事態まで起きた。
愛知県の大村秀章知事は、今月9日の臨時知事記者会見の中で「ジブリパークは大人から子どもまで、ジブリ作品の中に入って楽しむためのもの。多くの方が不快に思うようなことをされる方には来ないでいただきたい」と不快感を表明。「回転ずしの迷惑行為と一緒で極めて悪質。器物損壊に近いのではないか。(撮影者が)特定されたら、厳しい措置をとらざるを得ない」とし、法的措置を視野に入れる考えを示した。
その一方、大村知事は施設側の対応について「三鷹の森ジブリ美術館でも同じようなことがあった際、注意をして激高されたため、相手にしない対応のようだ」と話し、トラブルを避けるために施設側が不適切行為をスルーする方針にしたことを示唆している。
ジブリパークをめぐっては、混雑緩和や安全の観点から展示エリア内でのベビーカーの使用が禁止されており、SNS上で「ジブリの施設なのに小さい子がいる家族連れを想定してないのか」「何時間も子どもを抱っこしてろってこと?」「不適切撮影するヤカラは野放しでベビーカーは禁止って、誰のための施設なんだ」といった不満の声もあがっている。ベビーカーについては「通路がせまいので仕方ない」「階段が多いからベビーカーで回るのは無理」などと施設側を擁護する意見もあるのだが、先述の不適切写真騒動の影響もあり、批判の方が目立ってしまっている状況だ。
こうした一連の問題に対して、運営側はどのような対応をとっていくのか。ジブリ作品を愛する人たちが安心して気持ちよく楽しめる施設であってほしいが……。