4月9日投開票の神奈川県知事選で4選を目指し、立候補している黒岩祐治知事が、11年間にわたって年下の女性と不倫関係にあったと、「文春オンライン」(4月5日配信)で報じられた。
「文春」によれば、黒岩氏と不倫関係にあったのは、都内在住のA子さんで、2人の間では約500通に及ぶメールが交わされていて、黒岩氏からのメールはギャグを交えた卑猥な“下ネタ”が多かったようだ。また、黒岩氏はA子さんに成人向けビデオの購入を求めたこともあったという。
その後、2011年に黒岩氏が神奈川県知事選に出馬したことを契機にして、2人は破局したらしく、「文春」の取材に対して黒岩氏は「A子さん(回答は実名)と男女関係にあったことは事実です。12年前に急に知事選挙に出馬することとなり、公職に就く以上、身を正さなければならないと考え、A子さんに説明し、男女関係を断ちました」と回答している。
破局後12年も経ってからA子さんが黒岩氏と不倫関係にあったことを「文春」に告白したのは、男女関係にあった11年間に性のはけ口として弄ばれ、女性としての尊厳を踏みにじられたように感じたからではないか。そのため、怒りや悔しさがこみ上げてきて、どうしても許せないという気持ちを抱いた可能性は十分考えられる。
このような感情を相手の女性の胸中にかき立てる男性には、しばしば次の3つの特徴が認められる。
1)強い特権意識
2)想像力の欠如
3)状況判断の甘さ
まず、黒岩氏は灘中学校・灘高等学校を経て、早稲田大学を卒業し、1980年にフジテレビに入社した高学歴エリートである。しかも、『報道2001』のキャスターを15年ほど務めており、A子さんと知り合ったのはキャスター時代とのことなので、「自分は特別な人間だから、少々のことは許される」という特権意識が強かったとしても不思議ではない。おまけに、神奈川県知事に当選後、この特権意識に拍車がかかったことは十分考えられる。
また、ギャグを交えた卑猥なメールを送ったり、前述のようなビデオの購入を求めたりしたことがA子さんの胸中にどのような感情をかき立てたかということに想像力が働かなかったようにも見える。同じ女性としてA子さんの気持ちを想像すると、「自分は遊ばれているだけで、女性として大切にされていない」と感じた可能性が高い。
さらに、別れたときの状況判断も甘かったのだろう。黒岩氏は「文春」の取材に対して「公職に就く以上、身を正さなければならないと考え、A子さんに説明し、男女関係を断ちました」と回答しているが、A子さんとしては必ずしも別れを納得していなかったのではないか。だからこそ、怒りや恨み、悔しさや悲しさを12年間も引きずることになり、黒岩氏との過去の不倫関係を今回暴露することで一矢を報いたいと思ったのかもしれない。
黒岩氏は知事選で「やさしい社会」を作りたいと訴えているそうだが、今回報じられたA子さんに対する一連の対応を振り返ると、「やさしい」とは到底思えない。むしろ、他人の反応に気づかず、他人を傷つけることに鈍感な印象を受ける。もしかしたら、送信器はあるが受信器がない、もしくは受信器があったとしても感度が少々低いのではないかと疑いたくなる。こういう人物に対して神奈川県の有権者は一体どのような判断を下すのだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)