芸能人やスポーツ選手、財界人といった著名人を脅迫したなどとして逮捕状が出されているガーシー(東谷義和)前議員について、警視庁が複数のSNSアカウントの凍結を運営会社に要請したと報じられている。
ガーシー元議員は、詐欺行為などを告発され、警察から逃れるために中東のドバイに逃亡。だが所持金がほとんどなかったことから、かつて多くの芸能人と親交を持ち、男性タレントに女性を“アテンド”していた経歴を生かし、ユーチューバーとして芸能人の私生活を暴露することで収益を得るようになった。
ユーチューバーとして瞬く間に名声を得ると、NHK党(現政治家女子48党)から参議院議員選挙に立候補。比例区で当選し、参議院議員となった。
しかし、ドバイから帰国せず、国会に一度も登院しなかったことから、参議院は「公開議場における陳謝」の懲罰を決議。さらに、この「登院しての陳謝」も行わなかったため、参議院から除名処分を受けて失職した。この除名後、警視庁は脅迫や名誉棄損などの罪で逮捕状を取った。
他方、ガーシーの除名を受け、一部の支援者が国家賠償請求を行ったことが話題になっている。
NHK党の元党首・立花孝志氏は、「ガーシーに投票した方が、国を提訴しました」と報告。弁護士の村岡徹也氏もツイッターで「ただ今、東京地方裁判所にて、国家賠償請求訴訟を提起しました」と発表。続けて「国民5名が原告となって、ガーシー氏除名によって選挙権を直接侵害されたことを理由とする国家賠償請求になります。原告に参加したいとの表明多くの方からいただきましたが、今後原告団が中心となって署名運動を予定しております。」と説明し、訴状も公開している。
ただ今、東京地方裁判所にて、国家賠償請求訴訟を提起しました。
— 弁護士 村岡徹也 (@bvfO0yfPbFythcZ) March 27, 2023
国民5名が原告となって、ガーシー氏除名によって選挙権を直接侵害されたことを理由とする国家賠償請求になります。
原告に参加したいとの表明多くの方からいただきましたが、今後原告団が中心となって署名運動を予定しております。 pic.twitter.com/eZWHodiW3X
これを受けて、「投票権は行使しているのに選挙権が侵害されたという理論はおかしい」「無記名投票なのにガーシーに投票したことは証明できるのか」など、疑問や批判の声がSNS上で噴出。
さらに、「連絡先にしてる弁護士事務所も今所属してる事務所じゃなくて3年前に一人弁護士法人で本人が業務停止処分受けて行き詰まって破産宣告受けた事務所になってるし正気なのか疑わしい」など、原告団の弁護人となっている村岡弁護士について疑義を呈する声も少なくない。
これらの声に対して、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように説明する。
「この弁護士、注目を浴びたいだけではないでしょうか。そもそも、憲法上、『選挙権』とは、『国などの選挙に参加できる資格、その地位』と定義されています。そして、その資格・地位が害されるような場合、例えば、海外にいる日本人が海外で投票できない、ある地域では10票で当選できるのに別な地域では20票集めないと当選できないという不平等が発生している、などの場合、『選挙権が侵害された』ことになります。
しかし、原告となった方々は東谷氏という人に投票できたわけですし、前回の参議院選挙がいわゆる『議員定数不均衡による無効』とされたりしない限り、当選させることに成功した以上、どんな『侵害』があったというのでしょう。
この弁護士たちは、訴状7ページで『不登院を理由に東谷氏の議員資格を奪い、国民の選挙権を直接的に侵害した』と主張しています。
しかし、憲法15条1項には『公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利』と記載され、また、我々国民の代表として選定された参議院議員の集まりである参議院が『東谷氏を罷免』した以上、なんの問題もありません。
訴状を拝見しましたが、とても理論的で、大変僭越ですが読みやすいと感じました。しかし、私は、このようなことで限りある司法資源を奪うようなこと(無用な訴訟を提起すること)はしてほしくないと思います」
訴訟を起こすことは国民に与えられた権利ではあるが、今回はその権利を濫用しているようにみえる。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)