「全員敗者」が確定すると、胎児を最高の環境で10カ月もの間育てる子宮--最高級ホテルのスイートルーム--の、カーテン、壁、ベッドのすべてが、7日間にわたって暴力的に剥がされ、破壊され、ホテルの外に廃棄されます。これが「生理」です。それらの廃棄物は、牛乳ビン1本分(200cc)の血液と共に排出されます。
そして、再び、次の受精のために、次回の排卵に向けて、その豪華なスイートルームが再びリフォームされます。
●不妊の原因
なんか、書いていて、だんだん腹が立ってきました。妊娠に至るまでの、この効率の悪さ(3億分の1)や、複雑なメカニズム(自爆テロ)は、一体なんのためなのでしょうか? そして、なぜそんな律義に毎月毎月リフォーム(生理)をさせるのでしょうか?
人類が進化のプロセスで、このようなメカニズムを完成させたのは、それが優れた種を選び取るための自然淘汰や生存競争の結果であることはわかっていますが、しかし、これではまるで「自然」すらも出産を妨害し、我が国の少子化に協力しているようにすら見えてきます。
以下の図は、不妊の原因を示したものです。自然は、「ほんのちょっとでも問題が見つかったら、産ませないよ」というポリシーで、出産のメカニズムを運用していることがよくわかると思います。
このような「自然」の厳しい掟に対して、私たち人類も、指をくわえて座していたわけではありません。いわゆる、不妊治療技術(ART)を進歩させてきたのです。
次回は、「何がなんでも子どもが欲しい」と願う私たち人類が、「ちょっとでも問題が見つかったら産ませない」という厳しい条件を課す出産メカニズムに対して、その英知(ART)を結集して挑む、「自然vs.ART」の闘いを描きます。そして同時に、それは「卵子の老化」というタイムリミット付きの、肉体的にも精神的にも極めて厳しい壮絶な闘いであること、そして、子どもを願うパートナーたちの心と体を蝕みながら、負のループが回り続けている現状も併せてご報告致します。
(文=江端智一)
なお、図、表、グラフを含んだ完全版は、こちら(http://biz-journal.jp/2013/post_3693.html)から、ご覧いただけます。
※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(今回はhttp://www.kobore.net/kekkon.html)へお寄せください。