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出産させないシステムが完成した日本~破滅衝動=結婚をなぜ越えられないのか?

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出産させないシステムが完成した日本~破滅衝動=結婚をなぜ越えられないのか?の画像1筆者提供
 こんにちは。江端智一です。

 前々回、前回は、現在から将来のかけての人口減少の計算結果と、生涯未婚率の推移予測について記述しました。その中で、日本の人口が半分になるのは70年後、結婚を選択しない人が半分を超えるのは50年後、という結果を示しました。

 内閣府は「平成25年版少子化社会対策白書」(以下、少子化白書という)の中で少子化問題に対して、「我が国は、社会経済の根幹を揺るがしかねない『少子化危機』とも言うべき状況に直面している」との声明を出しております(「少子化危機突破のための緊急対策」)。

 私自身は、「社会基盤の根幹を揺るがす」などという認識では足りず、アガサクリスティの『そして誰もいなくなった』の国家レベルバージョン、日本史上最悪の国家存亡の危機、と考えています。

 内閣府の少子化対策の内容は、少子化白書に記載があります。まずは、その対策の方針だけを、大まかに図示したいと思います。

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 まず、動機ですが、「日本経済がヤバイ」はまあいいとして、「国民の『幸せ』を叶えられない」という、上から目線の物言いがかんに障ります。しかし、内閣府にはこのような記載ができるだけの根拠があります。結婚に対する意識を調査した結果「第1-1-6図 調査別にみた、未婚者の生涯の結婚意思」(2010年)によれば、未婚者の男性、女性ともに、ほぼ9割が「いずれは結婚しようと考えている」からです。

 このデータを見れば、「生涯独身主義」とか、「孤独死上等」と叫んでいる人がいたとしても(実際、私の周りにもたくさんいますが)、それが少数派であることは明らかです。つまり、内閣府が「結婚→妊娠→出産」のパッケージメニューを、「『国民の幸せ』と称して何が悪い?」と、開き直れるだけの理由はあるのです。

●政府が掲げる少子化対策

 さて、次に少子化対策のアプローチ(進め方)なのですが、これは、いわゆる「3本の柱」なるもので説明されています。

 最も重点を置いているのは、出産後の育児支援体制です。まず法律で枠組みをつくり(「枠」)、設備(育児施設)をつくり(「箱」)、国民の意識の改革を目指す、という流れになっています。特に、「枠」と「箱」の話が多い。いや、むしろ「枠」と「箱」の話ばかりのように読めました。児童手当制度、教育・啓発普及、地域環境、妊産婦の経済的負担軽減、保育所待機児童の解消、小児医療の充実、ひとり親家庭への支援……。

 ここから導かれる内閣府の少子化方針の意図は明確です。つまり「出産後のアフターサービスは任せておけ」です。そして、「アフターサービスが完璧なら、子どもは増えるはずだ」という、少子化に対する間接的、二次的なアプローチなのです。

 しかし、少子化の問題とは、「アフターサービス」の話ではなく、「子どもが産まれてこないこと」そのものです。この少子化白書を読んでいて、私が一貫して気持ち悪かったことは、「アフターサービスが充実していれば、どんなに高価でも商品は売れる」と考える、古いタイプの家電店の店主のイメージから抜け出せなかったことです。

●少子化になってしまう原因とは?

 そもそも、少子化白書には、「なぜ少子化になってしまうのか」に関する分析があまりクリアではありません。書けない事情があったのかもしれません。そこで、今回、その「書けなかった内容」を、私なりに推測してみました。

(1)少子化は最適戦略だから

 かつての我が国や、多くの発展途上国において、現実に、子どもは定量化できる労働力としての経済的価値であり、子どもの数が多いということは、多くの財産を所有していることになりました。

 一方、子どもは、成人前に死に至ることの多い不安定な財産でもありましたので、女性は、「子どもを生産するマシン→財産を生成する装置」として、閉経まで、子どもを産み続けなければなりませんでした。

 20世紀初頭、人口の全死者数の40%を5歳以下の子どもが占め、さら、18世紀まで遡ると、死んだ子どもは麻袋に詰めて、地面に埋めるだけだったという記載が残っています<『デザイナー・ベビー』(原書房/ロジャー・ゴスデン)>。ほんの150年前までは、堕胎は違法行為ではありませんでした。子どもの死産、または子殺しは、ごく普通の日常だったのです。

 しかし、その後、議会や法律によって、労働力としての子どもが社会から外されていくようになりました。日本の場合、15歳以下の児童の労働が禁止されたのは、太平洋戦争終結の2年後、1947年です。法律によって、15歳以下の子どもでも労働させることができなくなり、ここに「財産」としての子どもの価値は消滅します。

 そして、逆に、子どもは「献身」するべき対象として、いわば「負債」に変化しました。

BusinessJournal編集部

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