受験と教育の情報サイト「インターエデュ・ドットコム」では、高校別の大学合格者数ランキングが掲載されているが、2024年の難関大学入試結果を見てみると、圧倒的に私立高校の名前が多く並ぶ。国立では東京大学や京都大学が特にその傾向が強いが、大学によって趣が大きく異なる。大学ジャーナリストに最近の傾向について話を聞いた。
2024年の大学入試結果を見てみると、東京大への合格者が多い高校は1位から順に、開成高(東京)、聖光学院高(神奈川)、灘高(兵庫)となっており、トップ10のうち9校が私立で、公立は都立日比谷高(東京)が唯一のランクイン。京都大の場合は、1位の府立北野高(大阪)のほか、7位の県立旭丘高(愛知)、9位の県立岡崎高(愛知)の3校が公立。
だが、他の国公立大は公立高からの合格者が比較的多い。特に一橋大は、1位の県立湘南高(神奈川)をはじめとして10校中8校が公立高だ。東京工業大も10校中6校が公立。
他方、難関私立大学や医学部を見てみると、圧倒的に私立高の名前ばかりが並び、公立高は少ない。そんななか、首都圏のトップ4とも称される早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大(早慶上理)における高校別の合格数は、日比谷高(東京)が1位だった。ちなみに同高は、既卒者も含めた早慶上理の全合格数でもトップ。早大に201名(4位)、慶大に158名(2位)、上智大に83名(5位)、理科大に153名(5位)で計595名。
早慶上理への合格者数ランキングを見てみると、公立校は都立日比谷高と、4位の県立横浜翠嵐高(神奈川)、7位の県立船橋高(千葉)の3校。GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)では、7位の県立川和高(神奈川)、10位の都立新宿高(東京)のみ。
早慶上理への合格者が多い高校
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に、難関大学に入るための高校選びという視点で話を聞いた。
――早慶上理などの難関私大への合格者が多い高校は、国立大の場合と大きな違いはあるでしょうか。
「違いとしては、関西圏や地方の高校が入るかどうかです。早慶上理またはMARCHだと首都圏の高校が上位を占めます。一方、国立大学、特に東大や京大などの難関国立大の合格者ランキングだと、関西圏や地方の高校が上位に入ってきます。早慶上理だと、現在は首都圏出身者が7割前後を占めています。そのため、合格者ランキングでも首都圏の高校が上位を占めるのが自然です。
一方、東大だけでなく京大など難関国立大学の合格者数ランキングだと、京大、大阪大などの合格者が多い関西圏の高校が上位に入ってきます。具体的には灘(兵庫県)、甲陽学院(兵庫県)、市立堀川(京都府)などです。それと、北海道大や九州大などに強く、東大にも合格者の多い地方の高校も、久留米大学附設(福岡県)、熊本(熊本県)、札幌北(北海道)などが上位に入ります」(石渡氏)
――最近の傾向について教えてください(例えば私立or公立高校が増えているなど)。
「例年、強いのは付属・系属高校です。早稲田大のみだと、早稲田(東京)、早稲田実業(東京)、早稲田高等学院(東京)など。慶應義塾大のみだと、慶應義塾(神奈川)、慶應義塾女子(東京)、慶應義塾志木(埼玉)、慶應義塾湘南藤沢(神奈川)などです。
付属・系属校以外だと、公立のトップ校もランキングの上位です。具体的には日比谷(東京)、横浜翠嵐(神奈川)、県立船橋(千葉)、西(東京)、東葛飾(千葉)、県立浦和(埼玉)など。
ここに、首都圏の私立中高一貫校や国立大の付属高校もランキングの常連です。具体的には、栄東(埼玉)、市川(千葉)、広尾学園(東京)、本郷(東京)、筑波大学附属(東京)など」(同)
合格者数が増えている高校、減っている高校
――急速に伸びてきている高校はありますか。
「渋谷教育学園幕張(千葉)、渋谷教育学園渋谷(東京)と私立女子校です。後者は具体的には、頌栄女子学院(東京)、豊島岡女子学園(東京)、女子学院(東京)、洗足学園(神奈川)、鷗友学園女子(東京)などです。
渋谷教育学園の2校は2000年代に入った時点で進学校でした。それが2010年代以降、さらに伸びていった印象です。グローバル教育や帰国子女の受け入れを長年、展開しています。自由、かつ、多様な価値観を認めて自立を促す校風は、結果的には現在の大学入試改革にマッチしています。
女子校は、理数系に力を入れた高校がランキング上位に入っています。女子校の難関校は桜蔭(東京)などが東大や医学部志望者が多くいました。それが2010年代以降、リケジョ(理系女子)の需要が増え、進学者も増えています。この影響を女子校が、それぞれ受けているといえるでしょう」(同)
――逆に、かつてはランキング常連だったのに、最近は難関大合格者が減っている高校はありますか。
「桐蔭学園(神奈川)、筑波大学附属駒場(東京)、海城(東京)、東京学芸大学附属(東京)などは、2010年代以前はランキング上位の常連校でした。近年は早慶上理ランキングでは、そこまで上位に入っていません。ただ、東大などのランキングでは上位のままです。これは進学実績が下がったというよりも、医学部志向が強くなった、あるいは、地域外となる京大や大阪大なども含め進路が分散したことも影響しています。ランキングから落ちているといっても、それだけで志望校から外すのは考えものではないでしょうか」(同)
ひと昔前に比べると、就職にあたって判断される基準が学歴一辺倒ではなくなってきているものの、一部上場企業や大企業においては、まだ大学名が大きな要素となっていることは厳然たる事実だ。難関大学に進学することで、将来の就職口の幅を広げたいと考えている人は多いだろう。そのために高校選びに親子で苦闘したり、さらには中学校や小学校から私立受験をするケースは年々、加熱傾向にある。だが、有名高校に入ったからといって、大学進学が安泰ということはなく、逆にあまり有名ではない高校が難関大学に指定校推薦枠を持っていたりすることもある。
高校選びは慎重に慎重を期して、将来に花を咲かせていただきたい。
(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)