逮捕された大野木亮太容疑者(30歳)は警察の調べに対し「家族と折り合いが悪かった」と供述していると伝えられる。
編集部の調べでは、父親は愛知県警の総務部というセクションの幹部。しかし、これまでのところ、父親が被害者に謝罪したという話は聞こえてこない。県警自身が、父親の身分をつまびらかにせず、表に出さないようにしている節があるのだ。
「殺傷事件などが起きた場合、本人に代わって親族がマスコミを前に謝罪することがある。ましてや、犯罪を追及してきた警察官であれば、堂々と姿を現して息子の非をお詫びして被害者の感情に応えるのが筋ではないか。愛知県警では最近、暴力団関係者に捜査情報を漏らしたとして次々に警察官が逮捕されている。コンプライアンスが厳しく問われている時に、今度は隠ぺいか、などと言われかねない」(大手紙の社会部デスク)
これまでの調べや報道によると、大野木容疑者は以前、県警警視を務める父親、同じく県警警察官の弟、母親および祖母と同居していた。ところが、弟が独立し、昨年5月ごろに両親と祖母は大野木容疑者を残して引っ越し、独り暮らしをしていた。大学を卒業後、定職には就かずアルバイト暮らしで、最近は無職。親から生活費を受け取っていたという。
●計画的で強い殺意をにじませる犯行
それにしても、犯行のすさまじさには驚くばかりだ。大野木容疑者は、現場近くのレンタカー店で犯行直前に車幅1.8メートル、車長4.7メートルの中型セダン型の車をレンタルし、およそ15分後に名古屋市中村区名駅1丁目の笹島交差点から歩道に乗り上げて暴走し、次々と人をはねた。
「現場は、JRと名鉄、近鉄の3つの名古屋駅とデパートが立ち並ぶエリア。乗降客や買い物客でごった返す名古屋一の人通りに突っ込んだわけです。幅14メートルの歩道を暴走し、街路樹にぶつかって止まるまで、実に35メートルを暴走しました。県警の取り調べに対し、大野木容疑者は『アクセルをいっぱい踏み込んだ。ブレーキを踏んだ覚えはない』と供述しています。実際、歩道上で急加速したことをうかがわせるタイヤの痕がついていました。強烈な殺意が感じられます」(愛知県警クラブ詰めの記者)
●加害者の家族として被害者に向き合うか
こうした無差別殺人といえば、2008年6月に起きた東京・秋葉原の通り魔殺傷事件を思い起こす読者も多いだろう。7人が死亡、10人が重軽傷を負ったこの事件では、加藤智大被告(最高裁へ上告中)の逮捕後、青森市の両親が自宅前で報道陣の取材に応じ、「亡くなられた方、けがをされた方、申し訳ありませんでした」と謝罪した。取材中に、母親が地面に倒れ込む場面もあった。
「五月雨的にマスコミが押しかけ、いわゆるメディアスクラム状態になってしまうと、加害者側の親族が精神的に追いつめられるケースがある。そこで近年、一度だけマスコミの一斉取材に応じるとか、コメントを発表する手立てが講じられるようになった。こうした親族とマスコミの仲介役としてメディアスクラム対策を任されているのが県警の総務部だ。もちろん、成人している容疑者については、その親族は謝罪する義務がない、という理屈も成り立つが、被害者感情が許さない。警察当局は日ごろから、メディアスクラムを起こすマスコミに批判的だ。今度こそ、身をもって加害者側家族として被害者に向き合ってほしい」(前出・社会部デスク)
隠ぺい体質といわれないためにも、ここは潔い対応が望まれるところだろう。
(文=編集部)