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●受験科目としての英語
英語を学ぶ目的についても、戦前は「英文学や思想書の読解など高度な知的活動」という一部のエリート層のための教科だった英語(人格育成・教養としての英語教育)が、戦後はGHQ(主に米国)占領下において英語の必要性が高まり、また高度経済成長下で仕事上の有用性から「役に立つ」英語(スキル育成としての英語教育)が求められるようになった。加藤周一の「英語必修化反対論」(55年)、実用性と教養のどちらを重要視すべきかが論点となった「平泉渉・渡部昇一論争」(74年)など、さまざまな議論を経て、英語は基礎教育として「国民教育」化していくことになる。
しかし、「受験科目だから」「英語の教師がいるから」というレベルの現場では、受験科目としての「英文読解を中心とした受験英語」だけが優先され、結果的に英文読解では得点が取れても、国際社会で必要な英会話がまったくできないビジネスパーソンを大量に生み出してしまうことになった。
「英語の授業を受けたのに英会話ができない」という多くの日本人の悩みは、スキルでも教養でもなく、受験科目としてしか位置づけられていなかった戦後の英語教育が生み出した不幸だったのかもしれない。
(文=和田実)
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