その後、ブームが沈静化したとはいえ、生身の女性より、使用済みグッズを欲しがる男性は依然として多いが、芸能人の使用済みグッズまでもが裏で売買されていると聞いたら、信じられるだろうか?
以前、タレント・安西ひろこの使った割り箸がインターネットで売られて騒動になったことがある。出所は、安西が食事した店の従業員との憶測が飛んだが、事実は不明。しかし、こうした「アイドル・有名人の使用済みグッズ」がネットのみならず、マニア常連だけが入れる「裏市場」で扱われているのは事実らしい。大概は偽物だそうだが、中には正真正銘の本物もあるという。その入手先は、彼女らと直に接する機会を持つテレビ番組スタッフたちの中にいる。バイト感覚で、気軽に持ち出して裏市場に売り、小遣い稼ぎをしているのだ。
特に犯人で一番多いのが、現場の最下層であるアシスタントディレクター(AD)だ。かつて、某アイドルのパンストを持ち出し、裏市場に売った経験がある元ADは次のように明かす。
「ADといえば、“日々是重労働・低賃金”に喘ぐ日々です。おまけに、現場では人間扱いされず、単なる八つ当たりでボコボコに殴られる場合もあります。ストレス満タンで金もないですからね、唯一の特権を利用して、隙をみてはこっそり持ち帰って転売していました」
最下層とはいえ、本物の芸能人と直に接する機会に恵まれる彼ら、楽屋からグッズを盗み出すなど、決して不可能ではない。ほかにも、照明や大小道具等の現場スタッフ、メイクやスタイリスト、さらには売れない芸能人や出入り業者に至るまで、「持ち出し転売」する人は相当多いという。
「パートの掃除おばちゃんが、業者にそそのかされていろいろな物を持ち出してクビになった話は、一部では有名です。芸能人の使用済みグッズが裏に流れていても、なんら不思議はありません」(同)
敷居が低くなった裏市場
では、流れた品は、どんな人がどのようにして買うのか? 実際、某大手広告代理店の紹介で、繁華街のマンション一室で競売が行われる裏市場に参加したことのある男性は、こう証言する。
「まずは、身分確認といいますか、入会手続きの意味で、最初は現場で購入するのが原則と聞きました。一度、客として信用を得ると、特殊なパスワードと、ネット裏サイトのアドレスがもらえますから、以降はネット上でも競売に参加できます」
昔は、一部の各界大物御用達だった裏市場も、時代と共に変化し、今や紹介があれば誰でも参加できるほど敷居が低くなっているらしい。麻薬の広がりと同じだ。
「そこそこの売れっ子から、誰でも知っている超有名人まで、品揃えはハンパじゃありませんでした。一つずつ、真空パックされ、写真が付いていましたね。私は若手女優Nの品が欲しかったのですが、残念ながら売り切れでした」(同)
この男性によれば、パンストや靴、歯ブラシやクシ、使用したカップから髪の毛まで、内容はバラエティー豊富だという。
あるテレビ局の現役ADは、「僕もこっそりやっています。自分が好きなアイドルなら、売らずに持ち帰っています」といい、過去に転売したもののうち最高値は、「女優Sの足の爪」で15万円だったという。高額といえば、全国的に知名度が高まり、熱心なファンも多いアイドルグループ・AKB48のグッズなどは、さぞ超高額で取引されているかと思いきや、実際にはあまり出回らないらしい。その理由を、このADはこう推測する。
「AKB48ファンは、メンバーに性的欲求を感じていない人が多いんです。あくまでも、『自分たちがメンバーを育てている』という意識を持っていますから、出品されていても『トンデモナイ事件だ』と、きっと拒絶するでしょう」
ところで、このように芸能人の使用済みグッズをテレビ局関係者が持ち出して転売することは、法的に問題はないのだろうか? 弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員の山岸純弁護士に見解を聞いた。
「アイドル・有名人の使用済みグッズのうち、割り箸や足の爪などは、一般的にはゴミですので、このような持ち主のいないゴミ、すなわち、法律でいう『無主物』については、自分の物として占有すれば、その時点でその人の物となります。従って、それを誰に売ろうが、こっそり持ち帰って神棚に飾ろうが、その人の自由です。もちろん、法的にもなんの問題もありません。
次に、番組でアイドルたちが使用した小道具や、アイドル自身のクシ、歯ブラシなどを勝手に持ち出せば、番組制作会社やアイドル自身、すなわち所有者に断りなく持ち出しているわけですから、当然、窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立します」
他方、これらのグッズを買い取り、一般の人々に商品として売ることで利益を得ている業者側には、どのような問題点があるのだろうか?
「これらのモノを買い取る業者側ですが、上記のゴミ以外は、“一度使用した物品”、すなわち『古物』に当たりますので、これらの売買やあっせん、オークションなどを行う場合、古物営業法上の許可が必要となります。しかしながら、使用済みグッズの売買やオークションなどは“裏市場”で行われていることが多いようですので、まじめに許可を取っている業者は恐らくいないでしょう。
したがって、無許可業者が摘発されれば、古物営業法違反として3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
なお、古物に当たる使用済みグッズを持ち込む側も、単に一度売るだけなら古物営業法違反にはなりませんが、売買を繰り返して利益を得ていれば、営業とみなされる可能性もありますので、無許可営業として罰則も科せられるかもしれません」(同)
使用済みグッズを持ち出して売る側、それを買い取る業者側の双方に法的問題を抱えている可能性があり、こうした裏市場の利用は決して好ましいものではないといえよう。それにしても、現在、誰の品が高値で取引されているのかという点は、興味深いところだ。
(取材・文=城崎丈一郎)