ただ、この時点では警察からすれば、実際には真実相当性の有無を見極めるのは難しく、それなのに捜査を行わなければならないという問題もあります。法的には、B氏の告発が事実の通りならC社の告訴は虚偽告訴罪に当たる可能性もあり、法律以前に、性犯罪被害者を守るべき警視庁による重大な人権侵害行為だと思います」(弁護士)
●警視庁、性犯罪や脅迫行為の証拠を隠ぺいし、検察に書類送検
この後、事態は思わぬ方向へ動き出した。2013年春には、別の所轄署がC社へ性犯罪容疑で捜査に入った。犯人であるC社幹部は警察の取り調べに対し、猥せつ行為の事実を認め、性犯罪容疑で東京地検に送検された。C社は民事裁判でも名誉棄損だと訴えていたが、同年9月初旬には東京地裁で「C社幹部の猥せつ行為、さらにC社や、その弁護士による組織的脅迫行為は事実の通りであり、名誉棄損にならない」と認定する判決が下った。
前出のA署はこの判決を受け、性犯罪被害者女性らの知人の一人で、被害者女性らの支援をしていたB氏を、名誉棄損容疑で呼び出し、任意の事情聴取を行った。この支援者B氏は13年9月27日、10月19日の2回にわたって同署に赴き、B氏の告発は事実の通りである旨を説明。さらに、C社幹部による多数の猥せつ行為の証言・証拠を、被害者女性達の個人情報を抜いてA署に提出。さらにC社の脅迫行為の証拠も提出していた。これを受けるとA署はB氏に対し、警察がC社のために動いていることを口外しないように要求した。
●執拗に和解を強要する警視庁
この後、13年11月11日、A署はB氏に電話で「告訴しているC社の代理人に電話し、和解交渉を実施して、その結果を11月22日までに回答するように」と要求をしてきた。さらにA署は、B氏の弁護士に電話し、同じ要求を行ったが、B氏側の弁護士は断った。
「警察が一般人に対して、脅迫行為を実施していると裁判所が事実認定している加害者側の弁護士に電話して、和解交渉をするよう要求するというのは不適切でしょう。そもそも、和解など関係もないはずの警察が、なぜそのようなことをしているのか疑問です。B氏の弁護士としては、すでに東京高裁で控訴審が始まっていますから、警察から和解交渉をするよう要求があったことは東京高裁に連絡しておきますので、裁判所が必要性を見極め、必要なら裁判所が正当な方法で和解勧告をすると思います、という主旨の回答をしました。」(B氏の弁護士)
そして東京高裁の控訴審が始まったが、控訴審においてもC社は反省の色を見せるどころか、逆に猥せつ行為、脅迫行為の事実認定取り消しを強硬に求め続けた。これを受けて東京高裁は、和解勧告を一切せずに判決とすることを決定し、和解交渉は行われなかった。
●検察は略式起訴を要求
昨年12月11日、B氏は検察より任意の呼び出しを受けたため出向くと、あたかもB氏が虚偽の内容を表現したとする主張を展開し続け、B氏の説明で調書を書くことを拒否し、勝手に検事が調書を作成。そしてこの検事は「微罪なんだから、裁判にかけずに略式起訴を求め、わずかな罰金を払って済ませるよう」要求をし続けた。略式起訴とは、有罪であることを認め、裁判を経ずに罰金のみを払って事件を終わらせる刑事手続きを意味する。
さらにこの検事は「この後、A署の人間とも話をしないといけないんだ」などと発言し、同じ要求を続けていたが、支援者はこれを拒絶し、正当な主張を行った。