今月8日、内閣府は4-6月期国内総生産(GDP)の改定値を発表するが、どうやら改定値の実質GDPは、年率換算で前期比6.8%減だった速報値から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大する公算が大きくなってきた。4-6月期の個人消費は壊滅的な落ち込みを見せた。そのことがはっきりと窺えるのが家計最終消費支出だ。特に、この家計最終消費支出から帰属家賃(自分の所有する住宅に居住する場合も、借家などと同じサービスが生産・消費されたと考え、このサービスの価格を市場の賃貸料から推定する計算上の家賃)を除いた数値は、1-3月期と比較して22.7%減と極めて大幅な落ち込みを見せていたのである。この数値は、その時点の消費実態を最も正確に反映しているとされるが、この落ち込み幅は異常といっていいだろう。にもかかわらず、なぜか不思議なことに、マスコミはこのことに言及しようとしない。
「マスコミが、何らかの意図に基づいて意識的に報道を見送っているならば、まだ救いがある。しかしその実態は、単に気が付いていないだけなのだ。そうした点でいえば、安倍内閣は巧妙に自らにとって都合の悪い情報を隠蔽しているといえよう」(経済産業省幹部)
この22.7%減という数値は、4月の消費増税直前の駆け込み需要による反動減というレベルをはるかに超えており、7-8月の個人消費も各種統計を見る限り、このトレンドから脱していないといえる。
●ほぼ決定的な消費再増税
こうした状況を踏まえるならば、消費再増税は、「見送り」というのが正しい政策判断と言えよう。しかし政府の判断は、消費再増税に大きく傾きつつあるのが実情なのだという。
「安倍政権の基本スタンスは、国内向けにはとにかく“敵”をつくらないこと。安倍首相、ひいては安倍官邸が“敵”と位置付けたのは、これまでたった2つしかない。一つは、現在の黒田東彦総裁就任前の日本銀行。そしてもう一つが、石破茂・前自民党幹事長だ。つまり財務省については、“敵”として位置付けていないのだ。」(前述の安倍首相側近)
安倍政権が来年の10%への消費増税を見送ることは、財務省への敵対行動となる。もし仮に、安倍首相がその“見送り”に動き始めたならば、財務省が反安倍色を強めることは間違いない。
「2007年の第一次安倍政権が短命のまま終わってしまったのは、一つには財務省を敵に回してしまったことにあると安倍官邸は認識しており、二度とその轍は踏まないと決めている」(前出の安倍首相側近)
今年末に判断される予定である消費再増税は、ほぼ決定と見ていいだろう。
(文=須田慎一郎/ジャーナリスト)