安倍晋三首相に近い自民党大物議員がこう評するのが、9月の内閣改造で入閣を果たした塩崎恭久厚生労働大臣にほかならない。
「その塩崎大臣がここへきて、来年10月の消費再増税に反対を唱えだした。塩崎大臣がどこまで本気で言っているのかまだわからないが、もし本気で増税にストップをかけようとしているならば、かなり問題だ。その真意を確かめる必要があろう」(同)
それにしてもなぜ、一大臣の発言に、そこまで周囲がピリピリしなくてはならないのだろうか。同議員は、「第一次安倍政権の時のある出来事が、安倍首相を支えてきた人間には強烈なトラウマになって残っている」と次のように語る。
2006年、第一次安倍政権が発足して間もない頃、安倍官邸が主導するかたちで政府税制調査会の会長人事が行われた。小泉政権時代にその職に就任した石弘光氏を解任し、本間正明氏を政府税調会長に就任させたのだが、官邸としては単に独自色を打ち出したかっただけであり、この人事にそれほど深い意味はなかったとみられている。
●第一次安倍政権の“反省”
しかし、この人事が結果的に財務省の逆鱗に触れることとなった。
「そもそも、この政府税調会長は、毎年の税制改正に深くタッチするポストだけに、その人事は水面下で財務省が仕切ってきた。財務省サイドからしてみれば、そうした不文律を無視して、官邸が財務省のテリトリーに手を突っ込んできたと捉えたわけです」(前出議員)
そしてこの人事がひとつのきっかけとなって、読売新聞などの有力メディアが相次いで安倍政権批判に転じていくこととなった。さらに本間氏自身も自らの愛人スキャンダルが発覚し、就任からわずか数カ月間で辞職に追いやられた。
「当時、そのスキャンダルが発覚したのも、財務省サイドからメディアへ情報リークがあったためと囁かれていました。いずれにしてもこの一連の人事をきっかけに、第一次安倍政権と財務省は対立関係に突入。霞が関との対立関係が政権の寿命を縮めてしまったという反省が、現在の安倍官邸には強くあり、霞が関、特に財務省と対立することは極力避けようというスタンスをとるようになったのです」(同)
そして、ここで注目すべきポイントは、前述の政府税調会長人事を全面的に仕切ったのが、当時官房長官のポストにあった塩崎氏だったという点だ。